[mokuji]

 妄想くん

text / tagotago

 授業中だと言うのに、達也は股間を固くしていた。もっとも、健全な高校生なら、 ささいなきっかけで学生服の股間を膨らませてしまうのは、珍しいことではないけれ ど。

 達也にとってのきっかけは、休み時間に読んだテレビ雑誌の番組紹介だった。達也 の大好きなアイドルが水泳大会に出演するのだ。

テレビ帝都 7:30 「火曜ファミリースペシャル 女体だらけの水泳大会」

みどころ
 人気アイドルたちが、水着で大活躍。
 Tフロントじゃんけんのコーナーでは、グーとパーの判定で大もめ。ゲスト のかとうさせこが、私はガバガバじゃないと涙ぐむ一幕も。決勝は、ピンクサ ーモンとメドレーの3人組対決に。

 圧巻は、カマトトぶる嶋田麻美が、業を煮やしたCDガールズに羽交い締め にされ「クリトリスが感じるんです」と白状させられたうえ、執拗にバイブで 責められて、水着の腰を突き上げながらいってしまうシーン。達したあとの放 心した表情が印象的だ。

 また、恒例バイブで擬似フェラのコーナーでは、今林雅美ちゃんが舌技に初 挑戦。人差し指だけで茎裏をなぞったり、根本から先端まで、唇が触れるか触 れないかの軽いキスではいあがったりと、はにかみながらも懸命の愛撫が逆に 新鮮で、応援団のガチョウ倶楽部も完全勃起で大喜び。

 いつもながらのテレビ帝都の企画の芸の無さ、下品さを、友人たちと馬鹿にしあっ た達也だったが、実際のところは「あの麻美ちゃんのバイブ責めが見られるなんて! 16年間生きててよかった」と、もはや授業も上の空で、一刻も早く家に飛んで帰り、 テレビのリモコン片手に、いきり立つ息子をなだめたいと思うのだった。
 待ちきれない思いの達也は、ぼんやりと教科書を眺めながら、あらぬ想像にふけり はじめた。

 …………
 仰向けに横たわった麻美。
 少女らしい繊細な肌。白いワンピースの水着がよく似合う。長い髪が扇を広げたよ うにフロアに広がっている。
 彼女は、両目をひしと閉じてじっと耐えている。
 時おり、長いまつ毛が震えると、真一文字に結んだ口が、助けを求めるように開かれ る。しかし、声にはならない。
 男の二の腕ほどの大きさのマッサージ用のバイブレーターが、高い音、くぐもった 音と、音色を変えながら唸りつづけている。
 水着の上からではあるが、彼女のいちばん優しい部分に、遠慮会釈なく、ごりごり とバイブレーターを擦り当てられて、声もあげられないでいるのだ。
 執拗な攻撃から細い腰を逃げるように、白い水着が左右にぐねる。だが、バイブレ ーターは陰湿なまでに、彼女の弱点を正確に捉え続ける。ぶぅんと音色が変わると、 微かな声を漏らして、こらえきれなくなった腰が、くっ、ぐっ、と何度も浮き上がる。
 すかさずバイブが角度を変え、彼女の体重を受けとめるように、下からぐいと押し 当てられる。浮いたままの腰がぴりぴりと震えて、彼女が紡ぎ出した熱い液体が密か にあふれ、水着の細くなったその部分はおろか太腿の付根まで濡らして行くのがあり ありと見える。
 太腿が、きゅん、とひきつって腰が突き出されるたびに、白い水着のフロントが食 込んでいき、可憐な花びらを垣間見せる。
 攻撃目標の、そのふっくらとした部分を頂点にして、身体が弓のようにしなり、ま た反り返るたびに、彼女の甘い体臭がパフュームのように広がる。
 彼女はもう、みずからの運命を悟ったようだ。人格もプライドも粉々にしてしまう、 のがれられない時が迫っている。もはや抵抗することはできない。
 彼女の唇は酸素を求めて喘ぎ、つつましかった乳房も、水着越しにくっきりとその 頂点見せている。
 そして、いじらしいまでに湿潤した部分は、あらゆる角度から攻撃を続けるバイブ レーターをみずから追い求めるように上下し始め、時おり、もうバイブの動きを待ち きれないというように、暴れるバイブを太腿で挟みこみ、擦りつけるように激しく腰 を振りたてる。

 そして。
 「……ん、ん、ん、あ、あ……」すっぴんの唇から、熱にうなされたように声がも れ始めた。
 「…あ、あ…も…う…、だ……め……」長い髪を紅潮した頬に張り付かせている。
 「……い…」床をつかもうとするように握り締めた手が痙攣した。「…く……」
 弓なりになった彼女の身体が、さらに高く持ち上がり、ぎくん、ぎくんと大きく震 えた。
 快感の頂点が、彼女の内臓まで貫ぬいたのだ。
 頃合を見て、押し当てられていたバイブレーターがゆっくりと離されると、揺り戻 しが来たように、再び、ひくん、ひくんと身体が震えた。
 深く息を吐くと、涙をためた瞳がふわりと開かれ虚空を見上げた。
 …………

 などと、授業そっちのけで妄想にひたる達也だったが、窓際に座っている同級生の 明穂ちゃんの後ろ姿がふと目にとまった。明穂ちゃんはふっくらした童顔の活発な娘 だ。彼女の気取りのない性格に、達也も友達として好感をもっていたが、友達以上の 感情をいだいたことはなかった。

 しかし、今の達也には、悶えるアイドルと明穂ちゃんの姿がオーバーラップして見 える。あのいつも明るい明穂ちゃんも、敏感な部分を責められると身をよじって喘ぐ のだろうか……。

 

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