チェキッ!                            text / tagotago  1  「じゃあ放課後、体育館に来てください。セックスチェックをします」  恵理香の言葉にケイゾーは驚いた。  「せ、せっくすちぇっく、って何ですか」  無理もない。新入生のケイゾーは、セックスと言われただけで頭の中で怪し い想像が膨らんでしまう、そういう年頃であるし、そもそもケイゾーは "sex" という言葉に「性別」という意味があることすら知らなかった。  3年生の恵理香はケイゾーの反応を気にする様子もなく事務的な口調で説明 する。  「選手が性別を偽って競技に出場するのを防ぐために、性別を確認する検査 です」  「性別の確認……」  なんだ身体検査か。セックスという言葉に動揺してしまったことにちょっと 赤面しながらケイゾーは言った。  「でも、僕、間違いなく男ですけど」  「正式の検査の仕方が決まっていて、ちゃんと検査した上でないと公式記録 として残せないんです」  入部早々身体検査か。めんどくさいなあ。放課後、ケイゾーはそう思いなが ら体育館へ向かった。校庭の桜の花びらはとっくに散ってやわらかな若葉が顔 を見せている。  入学当初、ケイゾーはどのクラブ活動に参加するか考え込んでしまった。も ともと女子中学校だったこの学園が男子生徒を受け入れはじめてからまだ数年 しか経っていない。やはり男子は圧倒的に少数派だ。  文芸部や華道部、茶道部といった文化部はケイゾーには論外に思えたし、バ レー部、バスケット部のようなチームスポーツも女子ばかりである。  いろいろ考えたすえ、ひとりで競技が出来る陸上部が気楽でいいだろう、そ うケイゾーは思い、陸上部部長の恵理香に申し出たのだった。  「ケイくん、陸上部に入るんだって?」  体育館の入り口で真奈美が笑顔で話しかけた。  「うん」  真奈美は小学校以来の同級生だ。制服のせいだろうか、この学園に入学して から少し大人びた気もする。だが、無邪気な笑顔は以前と少しも変わらない。  真奈美と同じ学校に進学すると決まったときケイゾーは内心ちょっと嬉しか った。その真奈美は入学してすぐ陸上部に入っている。ケイゾーが陸上部に決 めたとき、真奈美のことを考えなかった、と言えば嘘になる。  「センパーイ、来ましたー」  真奈美の声に陸上部員たちが振り向いた。ケイゾーはかかとの潰れたスニー カーを脱ぐと、白い靴下で体育館の板張りの床を踏んで先輩たちに近づいてい った。  「えっと、1年2組のオブチです」  「あ、来たね。着てるものを脱いで」  体操着の生徒と何か打ち合わせをしていた恵理香が振り向いて簡潔に指示し た。  「え、ここで脱ぐんですか?」  「そう。脱いだら机の上に置いて」  体育館の左半分では女子バレー部員たちが練習の手を休めてこちらを見てい る。そして体育館のこちらがわ、ケイゾーの正面には数人の陸上部員が並んで いる。全員女子だ。そして細長い机がひとつ。  急に着ているものを脱ぐように言われて、ケイゾーは面食らった。だが、変 にためらうのもかえって気恥ずかしい。身体検査だしな、そう自分に言い聞か せて制服とシャツを脱ぎ、白いブリーフ一枚の格好になった。  ひとりの部員がケイゾーを呼び寄せた。  2年生の志乃だ。検査の係なのだろう、志乃だけが体操服で髪を後ろで束ね ている。ぴたりと引き締まった紺のブルマーが、みっしりと量感のある志乃の 太ももを際だたせている。ケイゾーはまぶしい思いで志乃の前に立った。  定位置を示すらしいラインが床に引いてある。志乃がケイゾーに指示する。  「その線の所に立ってください。もう少し両足を開いて」  志乃がケイゾーの正面にしゃがみ込んだ。  「始めます」  恵理香がうなずく。同時に、志乃の冷たい指先がブリーフの腰ゴムの内側に 入ってきた。  「え…」  ケイゾーが言葉を発する間もなかった。志乃はなんのためらいもなくケイゾ ーのブリーフを一気に足首までずり下げた。  「な、な、な」  ケイゾーはあわてて両手で股間を押さえ、情けない内股姿勢で助けを求める ように叫んだ。  「なにするんですか」  あわてる様子もなく恵理香が言う。  「大丈夫。みんなやってる検査だから。恥ずかしがるのおかしいよ」  「で、で、でも…」  「はい、手は体の横」  志乃が困惑しているケイゾーの手どけると、緊張で縮こまったささやかなペ ニスが姿を現した。  上級生たちは平然としているが、さすがに真奈美は赤面してケイゾーを正視 できないでいる。  「検査開始 4 時 13 分」  机で記録を取っている佳織の良く通る声が体育館に響いた。  「少し刺激があるけど、我慢して」  そう言うと、志乃はアルコールを浸した脱脂綿をピンセットで摘まみあげ、 看護婦のような手際の良さでペニスの表面を拭き清めていく。ケイゾーは予防 注射に緊張する子供のように、ただ身をすくめている。  脱脂綿が通り過ぎた瞬間、皮膚は気化熱を奪われて冷たく感じる。が、やが てアルコールの刺激で熱いような感触がペニスに拡がっていく。  「よし」  志乃は小声でつぶやいた。  これから何が始まるのだろう。ケイゾーは不安そうな目をしている。  志乃は落ち着いた表情で人さし指を伸ばすと、ケイゾーのペニスの裏側に当 てた。そのままペニスが水平になるよう指先でそっと持ち上げる。  「…!…」  ケイゾーは息を呑んだ。たった一本の指とはいえ、女子にペニスを触れられ たのは生まれて初めてだ。  触られてる……女の子に指で触られてる……。  ペニスの裏側、志乃の指の腹が触れている部分に痛いほど意識が集中する。 軽く触れているだけなのに、志乃の指先の感触は驚くほど鮮明にペニスに伝わ ってくる。  恵理香が志乃の支えているペニスのサイズを定規で測りはじめた。  「長さ、4.5 センチ」恵理香が報告する。  「平常時長さ 4.5cm」  記録係の佳織が復唱しながら、病院のカルテのような記録紙に書き込んでい く。  「幅 2.5 センチ」  「平常時亀頭部幅 2.5cm」  恵理香と記録係のやりとりは体育館全体に聞こえている。  「なんだぁ」  「小さいじゃん」  「成長しろよぉ」  「きゃは」  向こう側から見物している女子バレー部員たちが話している。  ケイゾーは志乃の手をあらためて見つめた。健康的なピンク色の指先。子供 っぽい丸みのある手とも、磨き込んだ大人の女の手とも違う、この年頃の少女 だけがもつ素直でやわらかな輪郭。吸い付くようにきめの細かい肌。  志乃が恵理香と佳織に何か合図した。  「あっ……」  次の瞬間、ケイゾーは思わず小さな声をあげてしまった。  ペニスを支えていた志乃の人さし指が、ケイゾーのペニスの裏側をゆっくり と移動しはじめたのだ。指の腹でケイゾーの裏筋をなぞるように指先が滑って いく。  「動かないで。床のラインにつま先を合わせて」  腰を引いて後ずさりしそうになったケイゾーを恵理香が制した。  志乃の細い指が根元からじりじりと裏筋を移動していき、亀頭裏のくびれの 部分でぴたりと止る。そして、再び根元のほうへ戻っていく。  指で……こすられてる……。  まるで志乃の指先が裏筋の皮膚を一枚剥がしたように、ペニスの感覚は鋭敏 になり、ケイゾーが今まで経験したことのない新鮮な快感が、志乃の指からケ イゾーのペニスにジュワッと染み込んでくる。しびれにも似た快感がペニスか ら腰全体、太ももまで一瞬のうちに拡がり、身体の芯に浸透していく。  女の子の、たった一本の指が、こんなに気持いいものなのか。初体験のケイ ゾーにとっては大きな驚きだった。と同時に、走って逃げたいような恥ずかし さもこみ上げてくる。  このままでは…まずい……。  志乃の指先は忍耐強く一定のペースでケイゾーをなぞりつづける。時おり、 志乃は反応を探るようにケイゾーの顔を見あげるが、ケイゾーは恥ずかしくて 目を合わせられない。  定規を持った恵理香はその様子を凝視している。  「反応ありました」  恵理香が報告するとすかさず佳織が復唱した。  「勃起開始 4 時 17 分」  まずい……先輩や真奈美の目の前で……勃ってしまう……。ケイゾーの懸命 の抵抗は、たちまち挫折感と無力感に変っていく。  ケイゾーのペニスは見違えるように体積と硬度を増し、脈を打つように亀頭 を隆起させてきた。もう指で支えるまでもない。志乃は人さし指で裏筋を撫で 上げ、さらに屹立をうながす。  「どうだろう……」  志乃は恵理香に判断を求めた。  「恵理香センパイ」  恵理香が覗きこみ、血管の浮き出た肉茎をつんつんとつついてみる。張りつ めた堅い感触。  急角度で反り返る亀頭を指先で押し下げてみる。指を離すとペニスは勢いよ く跳ね返りパチンと下腹を打った。  ケイゾーは顔を真っ赤にして耐えている。  「よさそうだね」  恵理香が佳織に言う。  「完了」  「完全勃起 4 時 19 分」  本当にみんなこんな検査を受けるのだろうか。そんなケイゾーの気持ちを見 て取ったのだろう。恵理香が、必死で耐えている表情のケイゾーをなぐさめる ように話しかけた。  「陸上部員は、みんなこの検査を受けるんだよ」  恵理香はケイゾーの肩に手をかけた。  「私も一年のときやったけど、女子はね、クリトリスを…」  恵理香の言葉に、ケイゾーのペニスがピュクンと跳ね上がった。ということ は真奈美も……。  「ぅぅ……」  思わぬペニスの反応にケイゾーが情けなさそうにうつむく。  「ごめんね。気にしなくていいよ。男子はみんなそうなるんだから」  ケイゾーをなだめた恵理香はてきぱきと測定をかたづけていく。  「10.5 センチ」「完全勃起時長さ 15cm」  「10.5 センチです。じゅう。てん。ご。」  「すみませーん。長さ 10.5cm」  「3.5 センチ」「完全勃起時亀頭幅 3.5cm」  「170 度」「勃起角 170°」  恵理香と記録を取る佳織の声が往復する。  バレー部員たちは練習そっちのけでケイゾーの検査を見ている。  「ひゃくななじゅーど!」  「ビンビンじゃん」  「きゃははっ」  ろけーけんさ。ケイゾーには恵理香の声がそう聞こえた。  「痛かったら、言ってね」  志乃はケイゾーにそう言うと、突然ケイゾーの包皮を根元に向かってひっぱ った。  「うあ。」  ケイゾーの情けない声と同時に、新鮮な色の亀頭がにゅるんと露出する。  「むけました」  「仮性包茎」佳織が記録する。  バレー部員たちの無責任な声がケイゾーにも聞こえてくる。  「ぷっ。ホーケイだって」  「えーっヤダわたし」  「やっぱしねー。そういうカオだよぉ」  「なんかフケツそう」  これで検査は終わったのだろうか。はやく家に帰りたい。とにかく早く終わ って欲しい。そう思うケイゾーに恵理香が声をかけた。  「もうすぐ終わるからね」  次が最後の検査なのだろう。  「じゃあ、いきます」  志乃が言った。佳織がボールペンを走らせる。  志乃の右手があがった。  ケイゾーの目に、志乃の親指、人さし指、中指がケイゾーのペニスの中程に 巻きつくのがスローモーションのようにゆっくり見えた。  次の瞬間、ほんの少し汗ばんだ志乃の手のひらがケイゾーのペニスに触れた。 微かに湿り気を帯びた手のひらがぴたりと密着し、ケイゾーの脈を打って震え る茎を包み込む。  そして、薬指と小指がそっとペニスに添えられた。  「…!…」  心臓の鼓動が一気に速まり、ケイゾーのペニスもそれに同期して反応する。  おびえた小動物のように手のひらの中でひくひくと抵抗し跳ね上がろうとす るケイゾーのペニスの熱い生命力を志乃は感じている。  ケイゾーは、志乃の手の小ささ、やわらかさ、そして吸いつくような密着感 をペニス全体で感じている。いや、それらの感触がどくんどくんとペニスから 体内へと流れ込んでくる。  ぎんと勃起した自分のペニスを握ったちいさな手を通じて、ケイゾーは志乃 と一体化したような錯覚すら覚えた。  志乃がわずかに握る力を強めた。  「んんんっ……」ケイゾーが声を漏らす。  「出てきた」  恵理香も志乃も見逃さなかった。ケイゾーの鈴口に、滑液がにじみ出し、透 明な水滴を作る。  復唱する佳織の声が体育館に響いた。   「カウパー腺液分泌 4 時 24 分」  佳織の声にバレー部員たちがウケている。  「ぷぷっ」  「若いわねー」  「キてます」  「ガマン汁!」  そして、志乃が右手をゆっくりと動かしはじめた。呼吸のリズムのような穏 やかな動きだ。志乃の手のひらに包み込まれ、大きなうねりのような快感がゆ ったりと、しかし深く押し寄せるのをケイゾーは感じている。  そのゆっくりした前後動に呼応するように、ペニスの先端からはケイゾーの 分泌液がじゅくじゅくと止めどなく湧き出てくる。  ケイゾーも、人並みに自慰行為の経験はあった。だが、これほどの先走りが 出るまで興奮したことはなかった。先程までの快感が皮膚と神経を刺激する快 感だったとすれば、今の快感はずしりと内臓まで響いてくる。  このまま刺激を続けられると……  志乃は真剣な眼差しでケイゾーの反応を観察しながら徐々にペースを上げて いく。  「そろそろ用意しておいた方がいいかな」  恵理香が佳織の机の上のシャーレを取りに行った。  あとどれくらいだろうか。志乃がペニスから手を離し、ケイゾーの顔を見上 げた。  いままで恥ずかしくて志乃の顔を正視できないでいたケイゾーもやっと志乃 と目を合わせることができた。  ひざまずいた志乃の顔。そして志乃の吐息がかかりそうな距離には、自分で も驚くほど堅く勃起したペニスが血管を浮かせ、滑液を溢れさせている。  黒く澄んだ志乃の瞳がまっすぐケイゾーを見つめる。  「……」  その瞬間、予想外の射精感がケイゾーを襲った。暴力的なまでの強烈な射精 感が、ペニスの根元を締めあげ、背骨から肉茎の中心まで突き抜ける。  「ああっ」  志乃にも、ケイゾー自身にも身構える余裕はなかった。ふたりが同時に声を 上げた瞬間、先走りに濡れて光るケイゾーの先端を震わせて精液が噴出した。 ケイゾーのペニスは激しく上下し、のたうつように何度も白濁した熱塊を噴き 上げ、まき散らした。  放たれた精液は驚くほど遠くまで飛散し、ケイゾーの若さを見せつけた。ワ ックスのかかった木製の床に、射精の激しさを示す長い軌跡が幾筋も描かれ、 その軌跡のところどころにどろりと濃い白濁が塊をつくっている。  「あ……ど、どうしよう……」  「すみません、わたし…」  ケイゾーが暴発してしまったことに責任を感じたのだろう。志乃が恵理香に 謝る。  「ううん。わたしが目を離したのがいけなかったのよ」  「す、す、すみません。あの……急に……」  「射精。4 時 27 分」  バレー部員たちの遠慮のない声が飛びかう。  「見て、あの子、あんなに出してる」  「やだぁ、セイエキ爆ダシ」  「ずいぶん溜めてたねー」  「ここまでにおってくる」  「ホントだ。セイエキくさーい」  「見て、採取係の子。髪まで飛んでんじゃん」  「やだ、かわいそー」  確かに志乃の前髪には勢い余ったケイゾーの粘度の高い精液がぽってりと付 着していた。だが、志乃はケイゾーの検査に集中していて気にかけている余裕 は無いようだ。  床に飛び散り、志乃の髪にも付着した粘液は体熱を帯びて、つんと鼻につく 精液臭を発散させ、体育館に充満させた。  ケイゾーは人前で射精したのも生まれて初めてだったが、精液の臭いを他人 に嗅がれるものむろん初めてだ。  自分のペニスの先端から精液が噴き出るのを、ペニスを震わせて精液をまき 散らすのを、志乃や同級生の真奈美をはじめこの体育館にいる女子全員に見ら れてしまった。そして、自分の精液の臭いを、自分の体内から放出された体液 の臭いを、女子全員に嗅がれている。  真奈美が静かにポケットからティッシュを取り出した。床に飛び散ったケイ ゾーの体液を無言のまま拭き取りはじめる。  ケイゾーは目眩いがしそうな羞恥を感じ、両手で股間を押さえてその場にう ずくまった。  2  「大丈夫。気にすることないよ」  恵理香がケイゾーに声をかけた。  「元気出して」  恵理香がケイゾーを立ち上がらせた。ペニスはすっかり萎え、ちぢこまって いる。  志乃が指先でつまみ、もみ回すようにように刺激してみる。だが、ケイゾー のペニスは指の動きをくねくねと力なく受け流すだけだ。羞恥と緊張のせいだ ろう、反応する気配がない。志乃は恵理香を見上げる。  かわって恵理香が三本指でケイゾーの茎をしごき始めた。手首のスナップを 効かせ、前後動に巧みにひねりを加える。  恵理香ならではの軽快で切れのいい手指の動きに志乃は思わず見入った。恵 理香は去年の検査のとき、わずか5分で三人射精させている。  スポーツウーマンらしく恵理香は弱音を吐かなかったが、困った表情は隠せ なかった。やはり、ケイゾーは反応しない。どうしよう。志乃とふたりで顔を 見合わせる。  萎えたペニスのまま、うなだれて立ちつくしているケイゾーに真奈美がそっ と近づいた。  「ケイくん……」  真奈美はつぎの言葉をためらっている。  だが、意を決したように耳元でささやいた。  「……勃起して……」  その瞬間、ひくりと反応があった。  「がんばって……おちんちん……堅くして……」  真奈美は頬を赤く染めながらも真剣そのものの眼差しでケイゾーに訴える。 ケイゾーの肉茎は明らかに角度を変えはじめた。  「ケイゾー君、その調子」  志乃が、ケイゾーを励ましながら、何度も握りを変えてペニスの手応えを確 認している。まだ完全ではない。だが、ケイゾーのペニスは芯を通したような 堅い感触に変化しかけている。チャンスを逃すまいと、志乃の手が動きはじめ た。  あれほどしおれていたケイゾーの肉茎が、別の生き物のように生き生きと頭 をもたげはじめた。責任感の強い志乃は念入りにしごき続ける。先端からはふ たたび先走りさえ溢れはじめている。  やがて、志乃が手の動きを止めた。手のひらでケイゾーの堅さを確かめなが ら、真横から、裏筋から子細に見つめて角度とそりをチェックしている。  やっと納得したのだろう、志乃が満足げにつぶやいた。  「大丈夫。完全勃起」  覗きこむ恵理香。自分で触れてみなくても、間違いない。準備万全だ。  「ケイゾー君」  志乃の黒い瞳がケイゾーの目を見つめた。志乃の右手は完全勃起したケイゾ ーを握ったまま静止している。  「検査を再開します」  ひと呼吸、間があって、志乃の左手の人さし指がケイゾーの最先端、滑液を 湧出させている鈴口にそっとあてがわれた。志乃の細い指先のしとやかな感触 がじゅんと亀頭に伝わってくる。  「う。」ケイゾーが思わず声を漏らす。  ほんの数ミリ、志乃の指先が滑液にのってぬるりと動いた。いやケイゾーの ペニスが震えただけだろうか。指先の感触が強い快感と共に再びケイゾーの感 覚器に流れ込む。  「うう。」  ケイゾーのうめき声に、バレー部員たちの失笑が拡がった。  「ヤダ、みっともない」  「バカじゃん」  ケイゾーは歯を食いしばり必死で自制しようとしている。  だが、志乃は指の腹で鈴口の割れ目をなぞるように人さし指を往復させはじ めた。痛みにも似た鋭い快感が志乃の淡いピンク色の指先からケイゾーの充血 した亀頭に突き刺さった。  「ああっ、うううっ」  再びケイゾーは声をあげてしまった。次々と送り込まれる刺激に、一度漏れ はじめたうめき声をもう止めることは出来なかった。  顔をのけぞらせ、声を噴きこぼしながら、腰をぐねらせて快感から逃れよう とする。だが、志乃に文字どおり弱点を握られている。無駄なあがきだ。  「ううっ。う。あぅ。うぅ。」  やがて、鈴口への刺激と同時に、肉茎を握って静止していた志乃の右手が前 後動を再開した。  「あううっ。くっうっ」  志乃はケイゾーの茎の反応を敏感に感じながら前後動のペースを上げていく。  くちゅん、くちゅん、くちゅん、とリズミカルに握った手を動かしてやると、 肉茎はきゅーっと力が入り反り返ろうとする。  ケイゾーの茎がめいっぱいリキんだのを手のひらで感じ取ると、志乃はクチ ュクチュッ、クチュクチュッと素早いストロークを繰り返し追い込みをかける。  「ううっ」  快感のうねりがズクンと来る。同時にケイゾーのペニスは、ひゅくっ、と軽 く脈動して一瞬力が抜ける。  志乃はほんの数秒手の動きを止め、肉茎に体勢を立て直すゆとりを与える。 つかの間の余韻がペニスに拡がり、ケイゾーは腹の底から息を吐く。その絶妙 のタイミングで再び志乃は、くちゅん、くちゅん、とリズミカルに肉茎を追い あげにかかる。  「ぁぅ…気持ちいい……」  小さな手の中でケイゾーのペニスは志乃の意のままに操られ、緊張と脈動を 繰り返しながら急速にらせん階段を追い立てられ、昇りつめていく。  茎への刺激特有の鈍く痺れるような快感が、ずんずんと内臓深く打ち込まれ、 高熱が背骨をじりじりと這い上がってくる。  その間も、左手の人さし指はケイゾーの鋭敏な鈴口をなぞり続けている。  一回目の精液採取失敗は志乃にとって惨めな敗北だった。だが、もう志乃は ケイゾーの反応するポイントとタイミングを完全に捕らえたようだ。志乃の両 手の動きには、何の迷いも感じられない。志乃の表情は、自分が与えられた責 任を果たしているという自信に満ちている。  いや、ケイゾーを見上げたとき、ときおり見せる満足げな表情は、志乃の手 指に翻弄され、うめき声をあげるケイゾーの反応を楽しんでいるようでさえあ る。  「いくわよ、ケイゾー君」  恵理香の合図で、志乃が包皮を根元に引っぱり、ケイゾーの仮性包茎の亀頭 をにゅくっと完全に露出させた。恵理香は左手でケイゾーのくびれに指で輪を 作った。最後の仕上げのために、志乃が敢えて触らず残しておいたペニスの最 も感じる部分だ。  鈴口から溢れ続けている充分過ぎる量の滑液が、恵理香の人さし指と親指を ケイゾーのカリ首にねっとりと密着させる。二本の指の先端がケイゾーの一番 の弱点、亀頭裏の窪みを捕らえている。恵理香がぬるり、ぬるりと指の輪を回 すようにこするたび、背筋が引きつり腰が震えるようなストレートな快感が恵 理香の指先からどっと全身に流れ込み、性感のうねりがペニスをぎゅくぎゅく と暴れさせる。  志乃が目で真奈美をうながした。さすがに真奈美はためらっている。だが、 真奈美も来年は志乃に代わって新入生のチェックをしなければならないのだ。  真剣な面持ちでこくんとうなずくと真奈美はケイゾーの背後にまわった。真 奈美はたちまち耳まで赤くなっていく。もう一度、かすかにためらう。が、思 い切って股間から手を入れ、震える四本の指先でケイゾーの袋をゆるゆると撫 ではじめた。  もちろん、志乃の両手は動き続けている。  「うううぅ、気持いいーっ」  ケイゾーは自制心も羞恥心も忘れ、うわ言のようなよがり声をあげはじめた。  「チンポ気持いいーっ」  ケイゾーの先端からあふれつづける腺液は、鈴口に当てられた志乃の指を伝 って、手の甲にまで達している。  「ケイくん、がんばって」  背後から聞こえる真奈美の声には緊張感がありありと表れている。ケイゾー を激励することで真奈美は戸惑う自分自身も励ましているのだろう。  「気持いいよぉ、チンポ気持いいよぉ」  恵理香が右手でシャーレを構え、佳織に目くばせした。  「採取準備。2回目。4 時 38 分」佳織が記録する。  「う。ううう…」  ケイゾーが体育館の天井を見上げて歯を食いしばった。視野の中を水銀灯の 軌跡が流れる。下半身全体に快感と痺れと熱が充満している。誰に、どこを、 どう刺激されているのかもう区別がつかない。  「ああああ…」  最後の気力をふりしぼって自分のペニスへ視線を移し、焦点を合わせようと した。  二人、いや三人の女子が、貧弱な、だが恥ずかしいほど勃起した自分の肉茎 から精液を搾り取ろうと全力を尽くしている。  「ああ、いく…」  三人の手が自分の股間に絡みつき、手加減なく指と手をうごめかせている。 繊細でしなやかな手指が、美しくそして意地の悪い動きで、恥辱の汁にまみれ た見苦しい自分の肉棒を極限状態まで充血させ破裂させようとしている。  「いく、いく、いく……」  何かを予感した志乃が鈴口から指先を離した瞬間。  「……い……」ケイゾーの身体が、きん、と突っ張った。  「……く……」背筋に寒気のようなものが走り、腰を思い切り前方に突き出 す。  「……う……」ペニスを握った志乃の手のひらに、びゅくん、と驚くほど強 い脈動が伝わる。ケイゾーのペニスがこれほどの力を秘めていたとは。  同時に、恵理香が差し出すシャーレに、びっ、と音を立てて新鮮な精液が弾 けとんだ。  二回目、三回目そして四回目と後続の脈動が、志乃の手を次々と揺さぶり、 シャーレに噴出する。  志乃は、ケイゾーの、いや、男子のペニスの、弾けるようなぎりぎりの生命 力を手のひらではっきりと感じた。  「志乃、手を休めないで」  放出された精液を思わずまじまじと見つめた志乃に恵理香が指示を飛ばす。  「出し切って!」  「はい…」  「オルガスムス。射精。2回目。4 時 40 分」  佳織も全身の力を振り絞って精を放出するケイゾーの姿に見入っている。  志乃は指先で裏筋を探り尿道を探し当てると、人さし指、中指の指先が尿道 に当たるように握りを変えて、根元から搾り上げる動作を始めた。袋の間際を きゅっと握り、指先で尿道を強く押さえながら肉茎の先端までしごきあげる。  志乃の手がケイゾーの根元から先端部へと移動するたびに、尿道に残った精 液が鈴口に溢れ、どろりとした糸を引いて恵理香の構えるシャーレにゆっくり と流れ落ちる。  「うっ。んはっ」  快感の絶頂をきわめ過敏になったペニスを、さらに念入りに搾り上げられ、 ケイゾーはきつい勃起を保ったまま腹筋を痙攣させてうめき声をあげる。  恵理香と志乃は顔を寄せて、もう精液が残っていないかケイゾーの亀頭を凝 視し、志乃がダメ押しにさらに二度三度ときっちり搾り切る。  「全部出たみたい」恵理香の言葉に志乃がうなずく。  二人は満足げに、採取したケイゾーの体液を眺めた。  シャーレに飛散した精液は、白濁した部分と透明に近い部分が微細な文様を 描いて、ぽってりと厚みのある溜りをいくつも作り、見事な濃さと量の多さを 示している。  「真奈美ちゃん、もういいよ」  射精のあとも懸命にケイゾーの玉袋を撫で続けていた真奈美に、恵理香が上 級生らしいやさしい口調で言った。  「がんばったね」  「検査完了 4 時 43 分」  佳織が宣言し、ペンを置いた。  完全に採取が終わったことを確認して、やっと志乃が握りしめていたペニス から手を離した。酷使されたケイゾーのペニスは分泌液にまみれ、無残なまで に充血している。  「…くはっ…」  そのペニスを露出したまま、ケイゾーは全身の力を使い果たしたように、べ ったりと床に座り込んでしまった。放心した表情で口を開け深い呼吸をしてい る。  さきほどの激しいオルガスムスの揺り戻しなのだろうか、時おり震えるよう な呼吸と共に、萎えかけたペニスがひくひくと痙攣する。  バレー部員たちは最後まで飽きずに見ている。  「なんか頼りない子ねー」  「うん。ダメそう」  「まだピクピクさせてんじゃん」  「ぷっ、カッコわるーい」  見かねてケイゾーに近づこうとした志乃の腕を恵理香が引き止めた。恵理香 が志乃に目くばせする。  様子を心配そうに見つめていた真奈美が、ケイゾーの脇にしゃがみ静かに話 しかけた。  「ケイくん、終わったよ」  真奈美に手を引かれてケイゾーは立ち上がったが、まだ呆然としている。真 奈美はケイゾーの足首に巻きついているブリーフを太ももまで引き上げる。そ して、一瞬ためらったが、ケイゾーのペニスをそっとつまみ優しくブリーフに 納めた。  ケイゾーが制服を着るのを手伝うと、真奈美は足元のふらつくケイゾーを体 育館の外へと連れていった。  恵理香が言った。  「来年の検査も大丈夫だよ、あの子がいれば」  志乃がうなずく。  陸上部員たちは後かたづけを始めている。アルコール、シャーレ、定規、巻 き尺、机……次々と運ばれていく。  両腕にだるさを感じながらぼんやりと後かたづけを見ていた志乃は、思い出 したように前髪に触ってみた。ケイゾーが最初に飛ばした精液が髪に残ってい る。  「ふう。シャンプーしないと取れないな」  指先に粘液を取り親指の腹で押してみる。弾力を感じそうなほど濃い精液が 指の間で潰れ、指を広げるとそのまましっかりとした糸を引いた。ケイゾーの ペニスが脈動する感触が志乃の手のひらに蘇ってくる。  志乃はふと優しい表情になってつぶやいた。  「元気な子…」  体育館の高い窓から差し込む光は金色からオレンジ色に変わりかけている。  「もう行くよー」大きなバッグを手に佳織が出口で振り向いた。  「待って、佳織」  志乃は顔を上げると、夕暮れ空が広がる出口に向かって小走りに駆けていっ た。 ------------------------------------------------------ チェキッ!                    text / tagotago version 1.0 2000-01-02 from "tagotago's TXT" http://members.tripod.com/~tagotago/index.htm Tagosaku Yamada ------------------------------------------------------