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 海流の中の彼女の瞳

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 1

 意外なことに、音楽室の扉は鍵がかかっていなかった。
 「怒られないかな」
 「大丈夫だよ。入ってみよう」

 昌夫とひとみは音楽室を見まわした。差し込む陽の光に無 数のすり傷を見せるグランドピアノ。無人の机の列。見慣れ た教室も不思議に新鮮な感じだ。

 そして、誰もいない音楽室に二人きり。ひとみは何も気に していない風だが、昌夫は少しひとみのことが気になる。

 教卓の上にカバンを置いて、窓から校庭を見下ろしてみる。 陸上部の生徒たちがランニングをしている。野球部の練習の 声、テニスボールを打つ音。そんな、どこか気だるい音が遠 く聞こえてくる。

 今日は日曜日だ。グラウンドや体育館と違って、ひとけの 無い校舎の中は静まり返っている。生徒たちのざわめきに満 ちたウィークデイとは別世界だ。音楽室は3階にあって、こ んな日はとりわけひっそりしている。

 昌夫とひとみは図書委員だ。
 午前中、各クラスの図書委員が図書室に集まって、古くな った蔵書の整理を手伝った。自分から図書委員に立候補した ひとみと違って、昌夫は出来ればサボりたかった。だが真面 目なひとみに電話で呼び出されて仕方なく学校にやってきた のだった。その仕事も三時間ほどで終わり、あとは帰宅する だけだった。

 昌夫とひとみは音楽室の後ろの壁の古びた肖像画を見上げ ながら話している。シューベルト、ベートーベン、モーツァ ルト、バッハ……。ふたりは顔を見合わせた。バッハの肖像 はいつ見ても国語の先生にそっくりだ。
 「岡田先生、昔は髪の毛フサフサだったじゃん」
 昌夫の言葉に、ひとみはちょっと前かがみになって無邪気 に笑う。

 一緒に笑いながら、ひとみを見つめる。昌夫はこんな瞬間 のひとみが一番好きだった。素直な笑顔はちょっと子供っぽ いが、もともと大人びて見えるタイプではない。飾り気のな いシンプルな髪型もスカートの丈もキッチリ校則通りで少し あか抜けないが、それもまたひとみらしい。

 今、屈託のない笑顔を見せているひとみは、小学生の頃と 変わっていないようにも見える。だが、そんなひとみ も何気ないしぐさや表情に年頃の少女への微妙な変化をふと 感じさせることがある。そう、今日も書架の整理をしている ひとみの真面目な表情、その頬の輪郭の微妙な曲線に昌夫は 密かに見とれていた。

 昌夫の身体と内面が小学生の頃から大きく変ったように、 ひとみの中にも誰にも見せない秘密があるのだろうか。昌夫 はふと切ないような気持になる。

 「何をしているの!」
 突然、厳しい声が教室に響いた。
 冷たく突き放すような声が、はしゃいだふたりの気持を瞬 時に萎縮させる。振り向くと、音楽教師の遠野が黒板を背に して険しい表情で立っていた。

 五線が引かれた黒板の横に音楽準備室のドアがある。遠野 はそこにいたのだろう。
 「すみません。鍵があいてたので」
 ひとみをかばうように昌夫が答える。
 「待ちなさい」
 叱られる前に部屋から出ようとするふたりを、遠野が 鋭い口調で制止した。
 「斉藤さん、あなた口紅付けてるでしょう」
 「……つけてません、口紅なんて……」
 ひとみが口紅などつけているはずがない。一目見れば判る はずだ。
 「持ち物検査するわ。学校に化粧品を持ってきてるわね」

 遠野の様子が普段と違う。

 生徒たちから見れば、大人など大方何が楽しみで生きてい るのか判らない存在だが、とりわけ遠野はつまらない人間だ と思われていた。地味な格好でつまらない授業をする、真面 目さだけが取り柄の独身教師。年齢は30才なのか、25才 なのか、見当もつかなかった。

 その遠野が、今日は濃いルージュに、ひざ上20センチも ないミニだ。漆黒のミニのスーツに純白のブラウスとそれに 劣らぬ白い肌が際だっている。

 昌夫とひとみは、遠野の怒りを含んだ目に凝視されて身を すくませずにはいられなかった。
 遠野は生活指導の面でも絶対音感のように潔癖だった。厳 格に校則を適用するので有名で、遠野の授業を受けていなく ても、この学校の生徒で遠野を知らない者はいない。

 有無を言わさず、遠野は教卓の上に置かれたひとみのカバ ンを調べはじめた。
 「斉藤さん、これは何?」
 遠野が取り出したのは一冊の雑誌だった。サイズは小振り だが2センチ程の厚さがあり、その表紙は明らかに成人雑誌 と判る。
 ひとみが困惑した表情で昌夫を見た。何も言わないがその 目は「昌夫が入れたのね」と言っている。昌夫はあわてて首 を振った。確かに、生真面目なひとみをいろいろとからかう のが昌夫は好きだった。だが、ひとみに嫌われるようないた ずらはしたことがない。

 さらに何か見つけたらしい。遠野の顔がさらに険しくなっ た。一瞬キャンディーを思わせるカラフルな包装を、不潔な ものでも触るように遠野が指先でつまみあげた。
 コンドームだ。

 「私の教室にコンドームを持ち込むなんて。許さないわ」
 「違います」
 ひとみが目に涙を一杯にためて訴える。
 「私、そんなもの知りません……」
 ひとみの目からみるみる涙があふれ、紅潮した頬を大粒の 涙が滑り落ちた。
 昌夫もひとみがそんなものを持っているはずが無いと思っ ていた。誰かが入れたんだ。誰かがひとみのカバンに……。
 「先生、誰かが入れたんです。斉藤さんがそんな物…」
 昌夫の言葉に、遠野が語気鋭く切り返した。
 「だとしたら一番怪しいのはキミね。キミが入れたの?」
 昌夫を窓際に立たせ、ピアノ椅子を持ってくると遠野は泣 いているひとみを座らせた。
 「どういうことか、じっくり話を聞く必要がありそうね」

 音楽準備室に誰かいるのだろうか。遠野が命令口調で言う。
 「器具を」
 驚いたことに、音楽準備室から姿を表したのは早坂教頭だ った。教頭はふたりと同じくらい動揺している。
 「遠野先生……生徒を拘束するというのは……」
 遠野に鋭い視線を投げられ、気弱な早坂教頭の言葉が途切 れる。
 「……し、しかしですね……やはり生徒には……」
 「黙りなさい。早く器具を」
 早坂は視線を落として音楽準備室へ入っていった。

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 2

 手首と足首に付けられた黒い革製の拘束具には存分に使い 込まれた形跡があった。人間の汗とうめき声を革の芯まで吸 いこんでいるに違いない。皮膚に密着する革の感触に、何も 知らないひとみも生理的な嫌悪感を覚え、思わず身震いした。

 革のリストバンドのような拘束具には頑丈な金属製のリン グが付けられ、リングに麻縄を通して縛りつけられると、手 足を完全に束縛された状態になった。

 昌夫とひとみは、教師たちが何をしようとしているのか全 く理解できず、ほとんど無抵抗のまま両手両足を拘束されて しまった。

 窓枠のアルミ製の柱を背にして立たされた昌夫は、両手を 後ろにまわされ、柱の向こう側で手首を合わせて固定されて いる。

 昌夫の正面、2メートルほど離れた場所にはピアノ椅子が 置かれ、後ろ手で両手首を固定されたひとみが座らされてい る。ソックスを脱がされたひとみの足首には、足かせのよう な黒い革製の拘束具が付けられ、椅子の脚に足首を固定され ている。

 遠野の命ずるままにふたりを拘束した早坂教頭自身も、み ずからすすんで遠野に手足を麻縄で縛られ、教室の隅に従順 に転がっている。

 ひとみの前には譜面台が立てられ、先程ひとみのカバンか ら出てきた雑誌が載せられている。
 「あなたの雑誌にどんなことが書いてあるのか知りたいわ。 私に、読んで聞かせてちょうだい」
 底意地の悪い声で遠野がひとみに命じる。ひとみはじっと うつむいたままだ。
 「早く読みなさい」
 ひとみは無言のまま、力なく首を左右に振った。
 「その格好じゃ読めないっていうの? もっと読みやすい 格好にしてあげてもいいのよ」
 窓枠に縛られた昌夫は目を見張った。遠野はひとみのスカ ートのすそをつまむと、昌夫に見せびらかすようにじりじり と持ち上げはじめた。あとわずかで下着が見えそうだ。
 「やめて。やめてください…」
 遠野の冷たい目に恐怖しながら、ひとみが嘆願した。
 「…読みます」
 ひとみは、遠野が指差すページをおびえた声で読み始めた。
 「沙絵子はあお向けになった。目を閉じて無言で……挿入 を待っている…」
 「もっと大きい声で読みなさい」
 遠野がかさにかかってひとみを威圧する。

 「沙絵子はあお向けになった。目を閉じて無言で挿入を待 っている。持ち上げた両ひざの間に身体を割りいれた啓一は 沙絵子を見つめながら言う。
 『自分で入り口にあててごらん』
 沙絵子はためらったが、決意に満ちた啓一の目を見つめる と、おずおずと指先を啓一の怒張に添えた。自分の入り口に 亀頭をあてがうと、かすかに沙絵子がうなずく。
 啓一は沙絵子の内部にゆっくりと亀頭を没入し始める。目 を閉じた沙絵子はわずかにのけぞり、白い喉を見せて大きく 息を吸い込む。
 啓一は、亀頭の先端をわずかに埋没させただけで腰を止め、 沙絵子の表情をじっと見つめる。沙絵子の内部で期待感と焦 燥感が脹れ上がる。
 『沙絵子』
 『……』
 待ちきれない沙絵子が何か言葉を発しようとした瞬間、啓 一は反り返る怒張を根元まで一気に沙絵子に打ち込んだ。
 『はうっ!』
 胎内を突き抜けた衝撃が沙絵子の口から噴出する。
 啓一は、ことさらゆっくりと亀頭の直前まで腰を引きなが ら、沙絵子の内部が吸着するように絡みついて来る感触を味 わう。
 少しも急ぐ様子なく深く息を吸い込み、さらに気合いを入 れて、もう一度根元まで怒張を突き込む。
 『んあっ!』
 沙絵子は眉根を寄せ、啓一の筋肉質の肉体が発する衝撃が 全身に広がるのを感じている。
 啓一は深く挿入したまま静止し沙絵子を抱きしめた。沙絵 子は胎内にみなぎる充実感と全身で絡み合う一体感を味わっ ている。幸福感が沙絵子を包み込む。

 そのまましばらく、ゆったりと正常位を楽しんでいたが、 やがて啓一は身体を起こした。沙絵子の両脚をつかみぐいと 持ち上げると、沙絵子の柔軟な身体はひざが胸に付くまで難 なく屈曲する。啓一の眼前に差し出された沙絵子の全貌は、 鮮やかな色合いの内部から淡い褐色の菊座、さらに太ももの つけ根にいたるまで、蜜をまぶしたようにぬらぬらと光って いる。少しの崩れも見えない沙絵子の端正な秘部は、淫猥と いうより新鮮な果実を割り開いたようなみずみずしさをたた えていた。

 啓一は沙絵子の両足首を自分の肩に担ぐと沙絵子にのしか かる態勢を取った。狙いを定めると、沙絵子の新鮮な果肉に 垂直に怒張を打ち込みはじめる。啓一が打ち下ろすたび、身 体を二つ折りにされて持ち上がった沙絵子の腰が、心地よい 弾力を伝えながらリズミカルに上下し、ニチュッ、ニチャッ、 ヌチュッ、ヌチャッと下品なまでの交接音をたてる。恥じ入 りながらも、日頃の取り澄ました顔からは想像もできないえ げつない音を溢れさせてしまう沙絵子を啓一は可愛いと思う。

 『…んっ…う…んん…うっ…んっ…う…』

 啓一に突き刺されるたびに、沙絵子は吐息のようなうめき 声を漏らす。啓一に串刺しにされながら、思い切り声をあげ てしまいそうな快感にじっと耐えている。啓一は、その控え めな反応をたまらなく愛おしく思いながら、ジュパッ、ジュ パッ、ジュパン、ジュパンとさらに厳しく沙絵子を打ちすえ る。

 『…あっ…あん…ああっ…あんっ…ああぅ…あんっ…』

 一度声が噴きこぼれ始めると、もう自分の意志で止めるこ とはできない。啓一は腰を存分に使って思うままに沙絵子を 操り、緩急自在に声をあげさせた。

 『あ…あ…ああっ! あっ! あっ! あんっ! ああ… あっ…あんっ!』

 啓一の両肩をつかんでいた沙絵子の両手が、背中を滑り降 りて啓一の腰にまわった。より激しい挿入を求めるように、 沙絵子の両手が啓一の腰を引きつけようとする。沙絵子は唇 を震わせながら、泣き声のような声をあげつづけている。

 『もっとたくさんして欲しいんだね』

 啓一の言葉に答えるゆとりも無い沙絵子に、啓一はパン、 パン、パンッと肉がぶつかりあう音を立てて……」

 「もういいわ」
 遠野がきつい口調でいう。
 「あなたどうしたの? さっきから様子が変よ」

 遠野の言うとおりだった。拘束具を付けられたひとみの足 首はピアノ椅子の左右の脚に縛りつけられている。自然に座 れば両脚は椅子の幅だけ開いているはずなのだが、先程から ひとみは無理に両ひざをつけ、太ももを閉じるように座って いる。かなり不自然な内股姿勢だ。

 「なんでもありません…」
 ひとみは赤面してうつむく。
 「そうかしら。身体の調子が悪いのなら、先生がみてあげ るわ」
 遠野がひとみの正面にまわり、うつむくひとみの顔を覗き 込む。ひとみは顔をそむけようとするが、後ろ手に縛られた うえ足を椅子に固定されていては、もじもじと身体をひねる のがやっとだ。
 「大丈夫です……」

 譜面台をどけてひとみの正面にしゃがんだ遠野が、ひとみ のスカートを持ち上げ中を覗きこんでいる。ひとみは上半身 をさらによじるが、無益な抵抗だ。
 「まあ、どうしたの」
 「…ゃ…」
 「こんなに」
 「……やめてください……」
 「いやだ、こんなになってるわ」
 「いや……見ないで……」

 「昌夫くん、そこからじゃ見えないわね」
 遠野が昌夫に振り向いた。
 「昌夫くんにも見てもらいなさい」

 右足の縄の結び目を解くと、そのまま犬の首輪でも引くよ うに、縄を引いてひとみの右足首をピアノ椅子の座面まで引 き上げた。ひとみのひざが胸につきそうに持ち上がる。
 「いやぁぁぁ…」
 そのまま遠野は、ひとみの右足の拘束具を座面の側面、ピ アノ椅子のクランクの部分に固定して縛る。同じように左足 も座面横に固定する。ひざに縄を巻きつけ椅子の背もたれへ とぐっと引き結ぶと、もうひざを閉じることもできなくなっ た。M字開脚である。
 「ゃ……いゃ……やめて……」

 窓から降り注ぐ陽ざしを浴びて、ネイビーブルーの制服の スカートに、ひとみの大腿部がM字型に浮かび上がった。無 駄な脂肪のたるみなど微塵も感じさせない両脚。それでいて ひとみの太ももは見事な重量感とボリュームに満ちていた。

 太ももが白い。どうしてこんなに綺麗な白なんだろう、昌 夫はそう思った。だが、白さというより透明感と呼ぶのがふ さわしいだろう。ひとみの肌は陽の光が透けてしまいそうな 透明感に溢れている。そして、触れると指先が吸いついてし まいそうな肌のきめ細かさ。いずれもこの年頃の少女特有の ものだ。

 その太ももに挟まれて、ひとみのもっとも繊細な部分を包 み込んだコットンの白い下着がふっくらと盛り上がり、惚れ 惚れするような曲線を見せる。その曲線の頂上付近、太もも の付け根のすじが張ったあたりには、クロッチの縫い目が弧 を描いて横切り、ひとみの優しいふくらみを強調する。

 大きく割り開かれた股間から、ひとみの甘いような体臭が ひときわ濃く立ち昇り、昌夫の全身をムンと包み込む。昌夫 はひとみに対して罪悪感を感じた。だが、鼻腔に充満したひ とみの匂いを深く吸い込み、味わわずにはいられなかった。 吸い込むたびに、ひとみの身体から発散する甘い匂いが頭の 芯までズンと響いてくる。

 「ほら、昌夫くん、見てごらんなさい」
 クロッチの縫い目のやや下に目をやると、しっかりしたコ ットンの生地すら透かして、ひとみの作った染みが浮き出て いる。
 「嫌な子。おとなしい顔をして、こっそり濡らしているな んて」
 「……ぃや……」
 遠野は、下着ににじみ出た染みを指先で上下になぞりかえ しはじめた。染みは次第に縦に広がり、ひとみのふっくらし た股間に明らかな縦筋を描き出した。
 「ゃ……いや…」
 ひとみはうわ言のように、いや、を繰り返している。
 「ねえ、どうして? どうしてこんなに濡らしているの?」
 そう言いながら、さらに指の腹でひとみの部分を押し広げ るように執拗に撫で回すと、染みは縦長のひし形を思わせる 形に広がった。水分を含んでぴたりと密着した下着の生地に は、ひとみの微妙な凹凸がレリーフのように浮かびあがり、 広がった染みの形は、もはやひとみ自身の輪郭を見せている に等しかった。

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 3

 「ほら、昌夫くんわかる? ひとみちゃん、こんなになっ てるわ」
 昌夫は無残に開脚させられたひとみの姿をぼう然と見てい る。
 「だらしない子ね。昌夫くんが見てるのに、こんなに濡ら して」
 「…見ないで…」
 ひとみは恥ずかしさのあまり、顔をあげることもできずに いる。
 「見ないで…ぃゃ…」
 「ふふ。まだ誰にも見せたことないんでしょう。男の子に 見られて感じてるの? さっきより、ほら、いっぱい出てる みたいよ」
 「あぁぁ……ぃゃ……見ないで……」
 昌夫はひとみから目をそらせないでいる。
 ひとみが下着を、いや女の子の部分を濡らしている。子供 っぽいと思っていたひとみが、女の子の液体をこんなに溢れ させている……。

 「まあ! ふたりそろってお盛んね」
 タイミングをはかっていたように遠野が嘲笑した。先程か ら硬化し始めていた昌夫の股間はすでに完全形となり、制服 のズボンを鋭角に突き上げている。
 「ひとみちゃん、見てごらんなさい。昌夫くん、こんなに 堅くしてるわ」
 ひとみは顔を伏せたままだ。
 「そうね。ズボンの上からじゃ、よく見えないわね」

 遠野は昌夫のベルトを外しズボンを下ろした。つっぱった ブリーフに昌夫の先端の形がくっきりと浮き出ている。抵抗 する亀頭を引っかけたままブリーフを一気にずり下げると、 昌夫の若い茎は弾かれたように跳ね上がり、音を立てて下腹 部を打った。

 「さあ、ひとみちゃん、今度はよく見えるわ」
 明るい声を出した後、遠野はひとみの耳もとで脅迫するよ うに声のトーンを下げた。
 「顔を上げて見なさい。見ないとあなたの下着も取ってし まうわよ」

 観念したひとみが、おずおずと顔をあげた。ひとみの視線 が両脚付近からそそり立った股間へと擦過するのを感じた瞬 間、昌夫の若く敏感なペニスは、ぎゅくん、と跳ね上がった。

 「…ゃ…」
 ひとみは、ちいさな悲鳴のような声を漏らして、反射的に 目を伏せた。だがひとみは目撃していた。昌夫の下腹部から 驚くほど大きく太い器官が鋭い角度で突き出しているのを。

 遠野に強制され、ぼう然とした表情のひとみが再びゆっく りと顔をあげた。とまどうようなひとみの視線がちらちらと 昌夫の下半身に投げられるたび、昌夫はびくびくと先端を震 わせて反応してしまう。

 昌夫のそれは、ひとみのなかの「おちんちん」のイメージ からかけ離れた大きさと形を持ち、予想外の急角度で屹立し ていた。昌夫の若々しいペニスは、グロテスクな印象こそな かったものの、男子がズボンの下に棍棒のように堅く大きな 器官を隠していたとはにわかには信じられない気持ちだった。

 昌夫くんが、あんなに太くて堅そうなおちんちんをしてい る……。

 「ほら、昌夫くん立派だわ」
 反り返る若いペニスに目を細めながら遠野が言った。
 「もうすっかり皮が剥けてるもの。先っぽが全部剥けてる」
 遠野の言うとおり昌夫は露茎だった。
 「…ぅぅ…」
 その見事に露出した亀頭部にひとみの視線を感じ取って、 昌夫はひときわ激しく反応した。ほとんど垂直に屹立した若 い茎は、ひくひくと痙攣するたびに先端部から透明な滑液を 湧出している。

 「ひとみちゃん、あなたに見られて昌夫くんだいぶ感じて るみたいよ」
 からかうように遠野が昌夫の先端部を覗きこむ。
 「こんなに出てるわ。見て、昌夫くんが出したのよ」
 溢れた粘液は律動する茎をぬるぬると滑りおりて、玉袋ま で達している。遠野が嘲笑した。
 「ほら、こんなに感じてる。よかったわね」
 ひとみは耐え切れず顔をそむけようとしたが、再び鋭い口 調で正面を向くよう命令された。
 「ちゃんと見なさい。ほうら、リアルでしょう。これが男 の子のメカニズムよ」

 ひとみは、精液以上に見てはいけない液体を見てしまった ような気がした。
 男子の性器から精液が出てくることは授業で習って知って いた。精液以外にも、品のない名前の液体が出てくるのだと クラスの男子たちのわい談で耳にしたことはあった。
 だが実際に目の前で、きつく勃起させた性器の先端からそ の下品な名前の液体を昌夫が溢れさせているのを見せつけら れると、ひとみは昌夫の生理現象の最も秘密の部分を見てし まったような気持ちになるのだった。

 ひとみは目を伏せることも許されず、ただぼう然と昌夫に、 びくびくと跳ね上がり律動する昌夫のペニスに、視線を向け ているほかなかった。

 遠野の指が、M字開脚のひとみの股間を再びさすりはじめ た。
 「ねえひとみちゃん、想像してるんでしょう。めいっぱい 勃起した昌夫くんが…」
 ひとみの下着にふっくらと盛り上がったその部分は先程に も増してじゅくじゅくと水気を含んだしみを滲ませ、ひとみ の内部が分泌する濃厚な匂いが今にも匂ってきそうだ。
 「ひとみちゃんのひだをかき分けて…」
 ひとみの丘に添えられた遠野の人さし指と薬指が、下着の 上からひとみの可憐な亀裂を、むにっ、と押し広げた。
 「…んぅぅ…」
 ひとみが震える吐息のような声を漏らし、同時に昌夫の先 端もきゅっと反応する。
 「こんなにぬるぬるになった、ひとみちゃんの中に…」
 二指で部分を開いたまま遠野の中指がひとみの内側を撫で る。
 「ずぶずぶ入ってくるところ…」
 皮下脂肪の盛ったひとみの亀裂の起伏、さらにその内側の 形を、濡れてぴたりと貼り付く下着に浮かび上がらせるよう に、遠野の中指は隅々までなぞりまわしていく。
 「想像してるんでしょう」
 ひとみは目を閉じてかぶりを振る。すかさず遠野が命令す る。
 「目を開いて、昌夫くんを見ていなさい」

 遠野の中指は、ひとみが分泌したぬめりを塗り広げるよう にひとみの内側をかき混ぜるかと思うと、ひとみのひだの上 端に這い上がって、小さな宝石のようなひとみの感覚器をこ ろがすようにうごめき、ひとみの蜜をさらに分泌させるのだ った。

 ひとみは自分の陰部をもてあそぶ指の動きに眉根を寄せて 耐えている。一刻も早く遠野の悪質な指戯が終わって欲しい、 そう念じながら、同時にひとみは、遠野の指先が執念深くな ぞり回している自分の最もデリケートな部分に、痺れるよう な、麻痺するような感覚が生まれ、徐々に拡がってきている のを感じていた。

 嫌悪感に身をよじり遠野の陰湿な指先から逃れようとすれ ばするほど、そのじんと麻痺するような感覚に意識が集中し てしまう。自分の意志に反して、ひとみの濡れた感覚器は、 その痺れるような感覚を味わってしまう。遠野の指の感触を、 遠野の指先の動きを期待してしまう。

 「気持ちいいんでしょう。言ってごらんなさい」
 「……。」
 ひとみは必死で沈黙を守っている。
 「そんな、はしたないこと言えないわよね。昌夫くんの前 で」
 遠野の指が小刻みに動く。
 「ほらどうなの? どんな感じなの?」
 首を振っていやいやをしながら、ひとみは無意識に腰をぐ ねらせて遠野の指から逃れようとする。
 だが、その腰を回すような動きは、かえってM字開脚の下 半身を強調してしまう。ひとみは昌夫の視線が自分の股間に 痛いほど突き刺さるのを感じた。
 「言えないわよね。こんなところをいじくられて…」
 遠野が中指の先端でひとみの下着の濡れた中心部をからか うようにトントンと叩いた。
 「気持ちいいなんて」

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 4

 昌夫の目の前に遠野の中指が突き出されている。

 「よくごらんなさい。ひとみちゃんに触った指よ。昌夫く んも見てたわよね。ひとみちゃんの一番敏感なところをこの 指で撫でたのよ」
 遠野は昌夫の目をまっすぐ見つめる。
 「キミも触って欲しいんでしょう。ひとみちゃんに触った 指で」
 昌夫は無言で首を振った。
 「ふふっ。して欲しいのね」
 「違います」
 「今さら見栄を張ることないわよ。気持ちよくなりたいん でしょう」
 「そんなことありません」
 首を強く振って昌夫は否定する。
 遠野は含み笑いを浮かべながら、昌夫の少年らしい真剣な 表情と勃起しきった若々しいペニスを見比べ、押し問答を楽 しんでいる。

 「そう。触って欲しくないの」
 遠野は、よく判った、という風にうなずく。昌夫の眼前で、 見せびらかすように指先を動かしてみせると、遠野はさり気 ない口調でささやいた。
 「本当かどうか、確かめてみなくちゃ」

 遠野は前かがみになって、指先をゆっくりと昌夫の先端へ と近づけていく。

 中指が触れる直前、遠野は動きを止めて昌夫のペニスを見 つめた。血管を浮かせた茎も、はち切れそうに膨れて光沢を 帯びた亀頭も、滑液の流れた跡を光らせながらドクドクと速 いリズムで脈動している。昌夫の心臓の鼓動が速まっている のだ。
 「んっ」
 昌夫の無防備な亀頭に指先が軽く触れた。それだけで、痙 攣するように若茎が反り返り、亀頭がひりひりと震えた。茎 が身をよじるたびに透明な滑液が鈴口から溢れ出し、見る間 に大粒の水滴に成長していく。
 「ふふふ。こんなに興奮しちゃって」

 遠野の細く優雅な指先がじれるほどゆっくりと昌夫を撫で 回しはじめた。遠野は他の指を使おうとはしない。右手の中 指だけが触れるか触れないかの感触で、昌夫の反応を楽しむ ようにじっくりと這い回り、もてあそぶように絡みつく。

 亀頭のくびれをなぞるように指先を滑らせたかと思うと、 流れ落ちる滑液のぬめりをからかうように裏筋を上下する。 昌夫の目を正面から覗きこみながら、亀頭裏に窪んだ昌夫の 弱点を円を描くように指の腹で擦り回す。
 「……くっ……うっ……やめて……ください」

 昌夫は苦悶の表情で耐えている。ひとみに勃起した姿を見 られ、先走りまで溢れさせてしまったが、ひとみの目の前で 射精に追い込まれるのだけは避けたかった。

 だが、遠野の中指が次々と送り込んでくる快感に、身体が、 ペニスが反応してしまう。亀頭が、くびれが、裏筋が、鈴口 が、生まれて始めての女性の手の感触に、ひとみの濡れた部 分を触った指の感触に、思考が消失するほどの快感を感じて しまう。ペニスがこれほど感じるとは……。

 「…うっ…やめて……」
 遠野のたった一本の指の刺激さえ、昌夫には持ちこたえる 自信が無かった。
 「…ううっ……やめてくだ……さい…」
 同じ言葉を繰り返すだけの、昌夫の精一杯の抵抗を鑑賞し ながら、余裕たっぷりの遠野がひとみに声をかけた。
 「ひとみちゃん、ごらんなさい。昌夫くんたら、こんなに 糸引いて」
 指先で鈴口を軽く弾くように先端から溢れる滑液をすくい 取ると、ひとみに見せびらかすように引き伸ばしてみせた。 昌夫の脈動する先端部から、見事な長さの糸が逆光に輝きな がら伸び、遠野の指先に絡みついた。

 「昌夫くん、いつも一人でしてるんでしょう? 毎日、毎 日、出したくてたまらないんでしょう」
 昌夫は無言で快感に耐えるのがやっとだ。
 「ねぇ、先生に教えて。ひとみちゃんでしてるの?」
 遠野はかまわずたたみかける。
 「あんな格好のひとみちゃんを見て、オナニーしたくてた まらないんでしょう。仕方ないわよね。ひとみちゃん、あん なに濡らしてるんだもの」

 遠野が口元に微かな笑みを浮かべ、問いかけるような表情 で昌夫を見つめた。次の瞬間、昌夫は口を引き結んで全身を さらに引きつらせた。遠野が中指に加えて親指と人差し指を 使いはじめたのだ。

 遠野は、まるでデザートのチョコレート菓子を摘まみあげ るように上品な、そして手慣れたしぐさで、昌夫の亀頭に三 指を添えると、亀頭独特の張りのある感触を楽しむように撫 で回している。
 「……ぁうっ……ぁ……くっ……」
 昌夫は拳を握り締めてうめき、全身を弓のように反らせた。 革の拘束具が手首と足首に食い込む。

 「同じ動きをしてあげる」
 謎をかけるように、昌夫の顔を遠野が覗きこんだ。
 「ほら、こんなふうにしたの」
 人さし指と薬指で亀頭のくびれを挟むと、亀頭裏で指の腹 を引きずるように中指がうごめき始めた。
 「こうやって、指を動かしたの」
 射精を逃れようと苦悶する昌夫を満足げに観察しながら、 遠野はささやいた。
 「こんなふうに……ひとみちゃんの、柔らかい割れ目を撫 でてあげたのよ」

 焼けるような緊張感が下腹部をズキズキと刺激し、体内で 何かが破裂しそうな切迫した感覚が脹れ上がっていく。明ら かに、限界は近い。

 ダメだ! 見てはいけない! 昌夫は自分自身に命じた。 だが、「眼」の意志は弱かった。ひとみのM字型に開かれた 太もも、遠野の指が撫で回していたひとみの股間、そこに昌 夫の眼は吸い寄せられ、凝視した。昌夫の視線を感じとった ようにひとみが顔を上げた。

 哀れなひとみの姿を視野に捕らえ、ひとみと目が合った瞬 間、叫びたくなるほどの快感が昌夫の内臓に充満し、茎全体 に炸裂した。

 「ああっ!」昌夫が突然声をあげ、両脚がぎゅんと引きつ った。
 「っ。」反り返った腰がさらにぎくんと跳ねる。
 「う。」突き刺すような快感が茎裏を走りぬけ、遠野の手 のひらにびしりと弾けた。指はうごめき続けている。
 「うっ。う。うう。うっ。う。」
 ひとみの姿を見つめながら後続の精液を鈴口から噴き出さ せるたびに、快感のあまり声が漏れてしまう。
 「ふ……ううっ……」
 すべてを出し切った後、震える息を吐きながら、昌夫はい ままで経験したことのない深いオルガスムスにぼう然と浸っ た。

 ひとみの目の前で、射精してしまった……。虚脱した表情 で昌夫は思った。

 「あらもういっちゃったの? あんまり早いと、ひとみち ゃんに嫌われるわよ」
 昌夫の若さを受け止めた手を遠野がひとみに見せた。
 「でも量だけは一人前ね。見て、こんなに」
 昌夫の体液が、遠野の指に絡みつき、手のひらをべっとり と汚している。初めて見るその液体は、ぽってりした濃厚そ うな盛り上りを見せ、半透明の中に微妙な白色の濃淡が流れ ていた。
 遠野がひとみの鼻先に手を近づけた。
 「かいでごらんなさい。これが男の子の匂いよ。ひとみち ゃんは初めて? ほら、昌夫くんの元気そうな匂い」

 ひとみにとって、あまりに生々しい光景だった。クラスメ ートの昌夫のペニスは、大きな快感の余韻の中でひくり ひくりと先端を跳ね上げるように脈動を続けている。そして、 昌夫がうめき声をあげながら射出した精液が眼前に突き出さ れ、ツンと鼻をつく青臭い匂いを放っている。
 勃起したペニスを見るのさえ生まれて始めてだったのに……

 「ハンカチ、借りるわよ」
 遠野は、ひとみのスカートのポケットを探ってハンカチを 取り出すと右手を拭き取り、ひとみの表情を楽しみながら、 精液に汚れたハンカチをひとみのポケットに再び押し込んだ。

 昌夫を料理した音楽教師は次の獲物に取り掛かった。今度 は先程のように回りくどくはなかった。ひとみの下着の上で うごめく指は、よりストレートに一点を狙っていた。

 ひとみのクリトリスの頂点を爪の先で掻くように、中指が 上下に滑り往復している。と思うと、ひとみの意表を突くよ うに時おり親指と人さし指でそっとつまみ、細かく振動させ る。M字に割り開かれた股間に、先程の麻痺するような感触 がまた拡がっていくのをひとみは感じる。

 再び、微妙な指先の刺激が、ひとみの弱点を往復し回転 する。じわじわと盛り上ろうとするひとみの感覚を見通した ように、絶妙のタイミングでクリトリスを指先でつままれる。 つまんだ指先が、振動し、擦り合わされる。

 遠野の馴れ馴れしい指の動きには迷いも無駄もなかった。 ひとみの弱点を知りつくしているように、同性ならではの陰 険なまでの正確さでねちねちと指を使い続けている。

 椅子の布地には黒ずんだ小さな染みができている。ひとみ の部分が分泌した液体が流れ落ちたのだろう。

 総身の筋肉を緊張させて身をよじり、遠野の指先から逃れ ようとしながら、ひとみは遠野に嫌悪感よりむしろ恐怖を覚 えていた。遠野は気まぐれでこの陰湿な遊びを続けているわ けではない。遠野の無慈悲な指の動きに、ひとみは明確な意 志を感じ取っていた。ひとみを必ず崩壊に追い込むという意 志を……。

 ひとみは必死で耐えようとする。だが、繊細な接触と濃厚 な指戯のサイクルを絶え間なく繰り返され、麻痺するような 感触は、否定しようのない感覚、明確な快感へと変わってい く。だめ……感じる……。いや……。感じる……。……気持 ちいい……。

 ひとみは自覚していただろうか。いつしかひとみは紅潮し た頬に乱れかけた髪を揺らし、押し殺した声を切れ切れに漏 らしながら遠野の指づかいに反応しはじめていた。

 「……ん……んっ……うぅん……んっ……」

 ひとみのはかない抵抗にとどめを刺すように、遠野がひと みの可憐な宝石を指の腹で押すようにリズミカルにこね回し はじめた。

 遠野の狡猾な指先に追いあげられ、ひとみは頂点を目指し て快感の急坂を一気に駆け昇っていく。

 「……ん……ぁ……んン……ぁぅ……」

 軽く閉じたまぶたを痙攣するように震わせ、ひとみは熱に うかされたような声を絶え間なく漏らしている。おそらくは 無意識の動作なのだろうが、M字に開かれた太ももをさらに 限界まで広げ、下着にふっくらと包まれた股間を突き出すよ うな姿勢をとっている。いまにも腰が座面から浮き上がって しまいそうだ。

 ひとみの両脚がぎゅっと突っ張り、小さな感覚器にひとみ の全神経が集中する。あと数歩、あとひと押しだ。ひとみの 肉体は絶頂の寸前にいる。

 ふいに、遠野が冷酷な笑みを浮かべると、ひとみの唇から 悲痛なうめき声が漏れた。
 「……ぅぅぅぅ……」
 達したのではなかった。
 激しくひとみを追いつめていた遠野が、絶頂の直前で突然 指使いを変えてしまったのだ。遠野は指先を、ひとみの小さ な感覚器の周囲に円を描くように軽く滑らせている。指先は、 あとほんの数ミリのきわどい部分をすり続けているが、決し てひとみのクリトリスには触れようとしない。

 ひとみは腰をくねらせて遠野の指先を渇望するが、ひとみ の動きを見透かし、もてあそぶように、指先は巧みに核心を はぐらかし、ひとみの弱点の周囲をつかず離れずなぞり続け る。

 昌夫の目には、小さな円を描く遠野の指先が、下着に遮ら れて見えないひとみのクリトリスを指し示し浮き上がらせて いるように見えた。

 昌夫はまだ写真でもそれを見たことはなかった。だが、遠 野の指が今なぞり回しているところに、ひとみのそれがある。 昌夫がペニスを限界まで勃起させているのと同じように、ひ とみも下着の中で小さな肉の突起をきつく尖らせているに違 いない……。

 「どうして欲しいの? 言いなさい」
 「やめて……」
 「ふうん、やめて欲しいの? この手を止めて欲しいの?」
 じれたように首を振るひとみ。
 「じゃ、どうして欲しいの?」
 遠野がクリトリスの頂点にすっと指先を滑らせた。
 「んン!」
 ひとみが身体を震わせる。だが、一瞬の接触のあと遠野の 指はひとみの頂点から離れていってしまう。
 「……」
 ひとみは黒目がちの眼に涙さえ浮かべ、言葉も出ない様子 で哀願するように遠野を見上げた。どんなに薄情な男でも、 こんな表情の少女を見れば優しく手を差し伸べずにはいられ ないことだろう。
 だが、遠野は冷たく言い放った。

 「ちゃんと言えるまで、おあずけよ」

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 5

 「昌夫くん、見て。これ」
 布地の黒ずんだ染みを遠野が指で示した。
 「ちょっと興奮しただけで、椅子まで濡らすなんて。恥ず かしい身体だわ」
 ひとみがM字開脚で座らされているピアノ椅子の座面、ひ とみの股間の真下に出来ていた染みは、小さいが先程より確 実に拡がっていた。
 ひとみにはどうしようもなかった。自分の意志で流れ落ち る分泌液を止められるはずもない。ただ顔を伏せ弱々しく首 を振るだけだった。

 ひとみの渇望をなだめるように、遠野が右手でひとみの股 間を撫ではじめた。
 「ぁぅ」
 遠野の指に操られるように、ひとみの澄んだ桜色の唇が開 いた。右手でひとみをやさしく慰めながら、左手でその唇を なぞる。ひとみは股間をまさぐる右手の動きに感覚を集中し ているようだ。抵抗する様子もなく従順に受け止めている。

 そのまま、ひとみの口に左手の人さし指を差し込み、口内 に含ませた。

 「ねぇ、昌夫くん」
 遠野の指がひとみの口内をゆっくりと掻き回している。
 「ひとみちゃんとキスしたことあるの?」
 唾液が溜まるのを待っていたのだろう、舌下に指を差し入 れ、溜まった唾液を指ですくい出した。
 「ないのね」
 困惑する昌夫に遠野が近づく。
 「ふふ、じゃあ、間接キスさせてあげる」
 ひとみのとろりとした唾液が、垂れそうなほどたっぷりと 遠野の人さし指に絡みつき光っている。
 昌夫の眼が指先を追う。指は昌夫の顔の正面で一旦静止し た。よく見ていなさい、とでも言うように。
 「ほうら、ひとみちゃんと……」
 スローモーションのようにゆっくりと、遠野の左手は真下 に降りていき、温かく濡れた感触と共にぴとりと昌夫に接触 した。
 「……ファースト・キス」
 遠野の指先は、昌夫の先端、鈴口に静かに触れていた。
 「ぅぅぅ」
 指先が、鈴口の割れ目を指先でなぞるように往復した。亀 頭全体になすりつけるように、ひとみの口内の神聖な蜜を塗 り拡げていく。
 「どんな感じ? ひとみちゃんに間接キスしてもらって」
 「いやだ……いやだ……」
 「あら、キミの身体は喜んでるみたいよ。気持ちいいよね え、ひとみちゃんの、つば」
 ぬるぬるした摩擦感を昌夫に楽しませるように、指先を亀 頭で滑らせ、撫で回す。ピアノを弾いているせいだろうか、 遠野の左手は右手に劣らず繊細に器用にうごめいた。
 「もっと欲しいんでしょう。おかわりしてあげるね」
 遠野が昌夫の亀頭に触れた指を再びひとみの口に入れよう とする。
 「やめてください」
 昌夫は身をよじって遠野に懇願した。
 「どうしたの? 欲しくないの? ひとみちゃんのつば」
 意地悪く微笑みながら遠野が反問する。
 「その指には……」
 「何?」
 「僕の……」
 「何なの?」
 「僕の出した汁が」
 昌夫は顔を真っ赤にして叫んだ。
 誰よりも昌夫自身が自覚していた。鈴口を撫で回され、遠 野の指先には溢れ出す先走りが付着し、絡みついてしまった。 ひとみの口の中には入れさせられない。
 「だから、やめて。やめてください。ひとみの口に入れな いで。お願いです」
 遠野は鼻であしらった。
 「そう、『汁』が出ちゃったの。若いっていいわね」
 遠野が右手であごを挟むようにしてひとみの口を開けさせ た。
 「ああ……」
 昌夫の痛恨の声と同時に、ひとみの口内に無遠慮に指が差 し入れられた。今度は二指、人さし指と中指だった。

 「どう? ひとみちゃん」
 昌夫に見せつけるように、ことさら舌面に指をなすりつけ ている。
 「昌夫くんの味がする?」
 ひとみの舌を指で挟むように執拗にいじってみせる。
 「美味しい? 昌夫くんのおちんちん」
 開いた口から吐息とも声とも付かない息を漏らしながら、 ただ遠野のなすがままにひとみは口内をなぶられていた。
 ひとみは動揺していた。
 口内に微かな「味」が拡がるのをひとみは感じた。それは 自分の唾液でも遠野の指の味でもなく、昌夫自身の味に違い なかった。「間接キス」という遠野の言葉がひとみの小さな 胸の中で渦巻いた。悲しみも嫌悪感も感じるゆとりはなかっ た。ただ衝撃だった。昌夫くんのおちんちんに間接キス…… 昌夫くんのおちんちんの味……おちんちんにキス……

 遠野の二指が、小さな気泡を含んだなめらかな蜜をひとみ の口内からたっぷりとすくいだし、亀頭にまぶすように塗り つけた。ひとみの清純な口内から、反りかえる茎へ、そして 袋へと、幾度も指が往復した。指先から垂らし、撫で回すよ うになすりつけ、揉みこむように両手で塗り広げていく。

 ひとみに、自分の恥ずべき汁を舐めさせてしまった……。 ひとみの口をけがしてしまった……。昌夫は言いようのない 後悔の念と罪悪感に胸が痛んだ。

 だが、ひとみの清らかな唾液が放つ芳香に包まれテラテラ と光を反射する昌夫の性器は先程以上に硬さと大きさを増し たように見えた。

 「どうして……どうして、こんなことするんですか?」
 昌夫が声を漏らした。
 「キミこそ、どうしてこんなに勃起させているの?」
 遠野は昌夫のペニスに指を絡ませ動かしはじめた。
 「キミの身体は喜んでる。どうして認めないの? キミは こうされるのを望んでるのよ」
 遠野の目に力がこもった。
 「本当の自分を受け止めなさい。リアルな自分を信じなさ い。未来でも過去でもなく、今を信じなさい」
 「先生は、僕たちをオモチャにしてるだけじゃないです か」
 「違う。それは違う」
 手足を麻縄で縛られ、床に転がされた早坂教頭が声をあげ た。
 「遠野先生と出会うまで、私は現実から目をそらして生き てきた。リアルな自分を信じることも、それに気づくことも できず、ただ人から与えられた時間を唯々諾々と生きてきた んだ」
 遠野が早坂を見下ろした。
 「このインポちゃんが20年ぶりに射精したときの喜びよう をキミたちにも見せてあげたかったわ」
 「キミたちは私のような人生を歩んではいけない。耳を澄 ませば、心の中の水脈の音が聞こえたはずなのに」
 「いいかげん気づきなさい」
 遠野は憑かれたような形相で語気を強めた。
 「この学校にあるのはウソだけだわ。真実はキミたちの身 体の中だけにあるのよ。不能なのは教頭だけじゃない。学校 全体がインポテンスなのよ。もう機能していないのよ」
 「先生はいつも生活指導してるじゃないですか。僕たちに、 学校の規則を守らせてるじゃないですか」
 「私は絶望したの。ウソだらけの規則に羊みたいに従って る生徒たちに、本当に絶望したの」
 昌夫がつぶやいた。
 「狂ってる……」
 昌夫の言葉に遠野が浮かべたのは会心の笑みだった。
 「教頭もキミたちも、縛られないと自由になれないなんて、 愚かだわ」

 やがて、遠野の白く繊細な手指の動きは、しなやかで複雑 な絡みつくような動作から、有無を言わせないスピーディー な前後動に変りはじめた。

 「おや、キミ、どうしたの? 袋があがってきてるよ。もう 発射しそうなの?」 

 じっくりと撫で回す動きも、素早い前後動も、ひとみの唾 液のなめらかさを最大限に利用していた。

 「間接キスで気持ちよくなっちゃったのかな」

 たくみなひねりを加え、1ストロークごとに手首の角度を 変えながら、素早くしごかれるたび、ひとみの清浄な唾液を したたるほど塗りつけられた昌夫の茎が、クチョッ、クチュ ッ、チュピッ、チュパッと派手な音を立てる。

 「もう、ずきずきしてるんでしょう。キミの元気な精液を 思い切り飛ばしてみたいんでしょう。ほうら、ひとみちゃん に見てもらいなさい。昌夫くんが射精するところ」

 昌夫のペニスを激しくしごきながらも、遠野は天井へ反り 返ろうとする昌夫の若い茎の角度を調整し、ひとみに精液が 飛ぶよう明らかに狙いをつけている。

 「昌夫くん、ほら、この角度で飛ばしちゃうと、ひとみち ゃんにかかっちゃうよ。いいの? ひとみちゃんにかけたい の?」
 「いやだ」
 「ほら見て、ひとみちゃんが太ももをあんなに開いて待っ てるわ。昌夫くんが射精するのを。昌夫くんに精液をかけて もらうのを」

 ときに素早い責めを緩めて、手のひらが亀頭を覆い、揉み こむように回転する。からかうように細い指先がくびれをな ぞる。が、昌夫がほっと息をつくひまもなく、再び飛沫が飛 びそうな勢いの、目もくらむような前後動を見舞われる。

 素早い動きをしていても、遠野の指の細さ、手のひらの柔 らかさを昌夫のペニスははっきりと感じ取っていた。遠野の 白くしなやかな手は、ゴツゴツした自分の手とは桁違いの快 感を容赦なく送り込んでくる。

 手が動くたびに、一本一本の指が亀頭のくびれを通過する たびに、大きく張り出した亀頭のえらをえぐられるような快 感が波状攻撃のように昌夫を襲った。

 露茎の亀頭の表面を遠野の指に摩擦されるたびに、ペニス の先端がツンと痺れるような感覚が、亀頭に充満し肉茎、玉 袋へと拡がっていく。

 ひとみの正面で、窓の柱に縛られた昌夫は聖像画の殉教者 のように身もだえしていた。遠野は、昌夫の先端をひとみの 顔に向け、ひとみに見せつけるように大きなストロークで昌 夫をしごきたてている。

 ひとみは、脅えたように身をすくませている他なかった。 目を閉じると、音だけがひとみの耳に聞こえてくる。激しく 動く遠野の手が立てる音。それに呼応する昌夫の息づかい。

 先程ひとみが受けた遠野の執拗な愛撫は確実に効いていた。 ひとみの内部で、脅えと同時に興奮が息づいていた。昌夫が ペニスをしごかれて感じている。遠野にいかされ、あれほど 大量に射精したばかりの昌夫がまた激しく感じている……

 クチュ、クチュ、クチュッ。チュパン、チュパン、チュポ ッ、チュポッ。
 あの下品な音は、自分の唾液の音だ、昌夫の器官に塗りつ けられた自分の唾液が鳴っているのだ、そう思うと、開脚さ せられ、昌夫の視線にされられている股間がじんじんと熱く 疼いた。

 「キミの袋の中に溜め込んだ青臭い精液をひとみちゃんに びしっと飛ばしたいの? ひとみちゃんの全身にどろどろか けてみたいの?」

 遠野の手はさらに攻撃的に動いていた。もはや男の意志 も感情も無視した、精液を搾り取るためだけの動き、射精と いう男の肉体の生理的反応を引き起こすためだけの、非情な までの男性器への刺激だった。

 だが、このまま達してしまえば、ひとみに精液を浴びせる ことになる。昌夫は自分の勢いと量を自覚していた。

 今、発射してしまえば、大量の精液がほとんど直線を描い てひとみの顔を襲うだろう。ゼラチンを混ぜたような濃厚な 体液がまぶたから唇までぽってりと付着して、ひとみは目を 開くことも、悲鳴をあげることもできないだろう。後ろ手に 縛られたひとみは、粘りつく濁液をぬぐうことも出来ず、強 烈な昌夫の精液臭にむせるに違いない。

 ひとみを汚したくない。それだけを念じて昌夫は踏みとど まっていた。

 亀頭がひゅくひゅくと震え、今にも昌夫の精子が噴き出そ うだ。昌夫はぎゅっと眼を閉じたまま下腹部に渾身の力を込 めて歯を食い縛り、こらえようとする。一瞬でも気を抜けば 高熱を帯びた白濁液が噴出してしまう。昌夫が自慰を覚えて から数年たつが、これほど射精をこらえたのは生まれて初め てだ。

 それも、もう限界だった。もう1秒と耐えられない。意識 が白くなっていく……。

 だが、昌夫の忍耐が瓦解する瞬前、遠野の手指の動きが止 った。
 「……」
 温かい感触が昌夫の顔に触れた。目を開くと、顔の正面、 吐息がはっきり感じられるほどの距離に、遠野が顔を寄せて きていた。
 「ひとみちゃんのために、我慢してるの?」
 額に脂汗を浮かべて射精をこらえている昌夫の目を覗きこ む。
 根元の側に親指が来るようにペニスを持ち替えると、小指 の先で亀頭をくすぐりながら、ささやく。
 「がんばるわね」
 遠野がゆっくりと首をかしげた。昌夫がそのしぐさの意味 を考えるゆとりもなく、次の瞬間やわらかい感触が昌夫の唇 を覆った。
 「…!…」
 射精寸前のペニスを右手に握ったまま、遠野は昌夫にくち づけしていた。

 左手で昌夫の後頭部を押さえ、むさぼるような熱く濡れた キスを昌夫の唇に揉みこんでいく。右の手は、四指がすなお に昌夫の茎をつかみ、小指だけが屈曲して亀頭裏のくぼみに 指先が触れるように添えられている。

 押し当てられた遠野の胸が心地よく潰れ、女の肉体の量感 と張りのある柔らかさを昌夫に教える。香水のエキゾチック な香りとシャンプーの匂い、そしてムッと女を感じさせる遠 野の体臭が鼻腔に充満する。

 ねっとりと密着する遠野の唇に唾液を強く吸われながら、 再び右手が射精をうながすように動きはじめると、すでに崩 壊寸前だった昌夫の思考と忍耐力はまたたく間に揮発した。 もはや体内に残っているのは、射出寸前の精液と射精の本能 だけだった。

 覆い被さってくる遠野の上半身を受け止めながら、昌夫が 腰を突き出すように全身を反らせた。上ばきの両足がつま先 立っていく。身体の湾曲が極限に達し昌夫の全身がぴんと張 りつめた。

 その瞬間、遠野の手に確かな手応えがあった。こみあげる 射精感に限界まで耐え、ついに屈伏した昌夫の若いペニスが、 力をこめて脈動し精液を噴出させる手応えが。

 ほとばしる精液にペニスの内側をえぐられるような快感が、 波紋を描いて悪寒のように昌夫の全身に拡がっていく。遠野 は、昌夫の肉体が絶頂感に震え、痙攣するのを感じ取りなが ら口内深く舌を侵入させ、なお射精をうながすようにペニス をしごきたてた。

 ひとみは反射的に身をかわそうとした。が、椅子に縛りつ けられた状態では、首をすくめ顔を背けるのがやっとだった。

 昌夫は、遠野に全身を包み込まれ身体全体から精液を搾り 取られるような錯覚を覚えながら、遠野の柔軟な舌にくまな く口内を犯され、しごかれるままに後続の精液をしぶかせた。

 「…むぐっ……ぅぐ……ぅぐっ……むぐ…」
 びゅくっびゅくっと茎を脈打たせて吐精するたび、遠野の 唇と舌に塞がれた昌夫の口から、快楽を訴える声が漏れ聞こ えた。

 昌夫の全身が弛緩し、すべて放出し終えたことを告げたあ とも、遠野は昌夫の硬い茎を握り締めたまま唇をむさぼり続 けた。射精の快感に酔う昌夫は抵抗する様子もなかった。な されるがまま、従順な口内と若々しいペニスの感触を惜しげ もなく遠野に味わわせた。

 「キミはピュアで澄んだ味がする。おいしかったわ」
 遠野は、自分が唇を奪い強引に射精させた少年の脱力し放 心した表情を満足げに眺め、昌夫の頬をちょんちょんと指先 でつついた。
 「ふふっ、それにこの勢い。ずいぶん飛ばしたわね」

 ようやく解放された昌夫の表情には、快感の余韻への陶酔 とともに、抗し切れず崩壊してしまった自己への無力感があ った。悲しげな目が、少年の表情にどこか凛々しさを与えて いる。

 その悲しげな眼で、昌夫は自分が噴いてしまった体液の行 方を追った。噴出した熱い液体の大部分は、幸い床に飛び散 っていた。制服の肩口に一筋、勢いよくひとみを飛び越えた 精液が軌跡を残しているだけだ。

 大切なひとみを汚さずに済んだ……昌夫は安堵した。大切 なひとみ……仲のよいクラスメイトとして、微かなときめき 以上ものは持っていないつもりだったが、今はひとみがたま らなくいとおしかった。自分にとってひとみが、どれだけか けがえのない存在か、昌夫は初めて自覚した。

 ひとみはぼんやりと昌夫を眺めていた。脱力した表情の昌 夫の唇の周囲には遠野のルージュが生々しく残り、昌夫の先 端はようやく角度を緩めながらも、ひくり、ひくりと不随意 に跳ね上がっている。

 目の前で昌夫が身をよじり絶頂を極めるのを見せつけられ、 ひとみは、再び内部から湧き出した熱いものが、開脚させら れた亀裂から溢れ、肛門を伝って流れ落ちるのを感じていた。

 ひとみがまた、椅子を汚していく。

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 6

 遠野の指先が、ひとみの前でハンカチをふわりと振りひろ げた。刺繍にふちどられた布地から、ほのかなパフュームの 香りが漂う。

 絶頂の直前でお預けを喰わされたうえ昌夫の激しいエクス タシーを見せつけられ、下着に包まれたひとみのやさしいふ くらみには熱くうずくような存在感が脈打っていた。

 遠野の指先になぞり回される感触が蘇ってくる。両脚をぎ ゅっと閉じて部分を圧迫したい欲求に駆られる。だが、今は M字に両脚を開かれ、熱を帯びた部位を昌夫に開放するよう な姿勢のままつのる渇望感にじっと耐える他なかった。

 「昌夫くんが射精するのを見て、興奮しちゃったのね」
 透き通るように白かったひとみの大腿部が、上気した頬と 同じ桜色に染まっている。
 「そうなんでしょ」
 ひとみの滑らかな下腹部に緊張が走った。遠野がひとみの 下着の上端に指をかけ、そのまま、下着を浮かせるように手 を差し入れてくる。
 「……ゃ……」

 遠野はもう一方の手で、先程のハンカチを下着と下腹部の 隙間にさし入れ、ひとみの柔らかな部分を覆うようにあてが った。下着の下に広げられたハンカチが太ももの部分までは み出して奇妙な光景を見せる。

 下着の上端を指先で摘まんで、遠野が引っぱり上げはじめ た。下着の布地がぴんと張るように密着して、ひとみのふく らみの輪郭を浮かび上がらせる。
 遠野が昌夫に言う。
 「見て、ひとみちゃんったら、立派なチキュウだわ」
 からかうように、左右に揺らしながらさらに引っぱる。
 「……」
 ひとみは遠野の言葉が理解できずにいる。
 「ここのことよ。男の子が見てるのは胸だけじゃないわ。 女の子の恥丘が、ぷくっ、と盛り上がってると男の子は喜ぶ のよ」
 ひとみの目に、もともと高めのひとみの丘が下着を引き上 げられて一層強調されて見えている。
 そんなことは考えてみたこともない。だが、言われてみれ ば、その部分のふくらみが人より大きいような気もする。自 分のそれがひどく品のない形をしているような気がしてくる。
 ひとみの動揺を見透かし、追い打ちをかけるように、遠野 が下品な言葉を投げつける。
 「ふふふっ、もりまんちゃん」
 「……ゃぁぁぁ……」
 恥ずかしく盛り上がった股間を昌夫に差し出すように開脚 姿勢を取らされたまま、ひとみは顔を覆うこともできず、た だ伏せた顔を左右に振るだけだった。
 昌夫の視線が、ふくらみに釘づけになっているのをはっき りと感じる。同時に、ふくらみの内部の疼くような熱い感覚 が脈を打つように強まってくる。

 「おみやげ」
 遠野が含み笑いでささやいた。
 「昌夫くんに、おみやげをあげなきゃ。」
 下着の下のハンカチをさらにひとみに密着させるように、 下着を引っぱりあげながら昌夫に尋ねる。
 「どうなの? 昌夫くん。欲しいでしょこのハンカチ」
 昌夫は否定したかった。だが、からからに渇いた喉からは、 とっさに声が出なかった。遠野が喜色満面になる。
 「そうよね。欲しいわよね」
 この、ひとみの中心部に密着したハンカチを自分のポケッ トにねじ込まれたら、自分は捨てることは出来ないだろう。 ひとみに対して罪悪感を感じながら、きっと匂いを嗅いでし まうだろう。そして……
 「このハンカチの匂いで、昌夫くん、オナニーしてくれる わよ。昌夫くん元気いいもの、きっと凄いわ」
 「……ぃゃぁぁ……」
 ひとみには、男子が自慰をする姿を具体的にイメージする ことはできなかった。それでも、ついさっき目の前で見てし まったように、昌夫がハンカチを嗅ぎながらオルガスムスに 震える姿は容易に想像できた。
 自分の匂い、いや自分の濡れた部分の匂いに興奮して、昌 夫が自慰に耽る、そう思うと、ふたたびきつく勃起している 昌夫のペニスに視線が吸い寄せられてしまう。先程の、激し く精液を噴き散らしていた昌夫の姿がありありと蘇ってくる。
 「……やめて……」
 絶望的な気持ちだった。意志に反して、ひとみの身体はま すます昂ぶり、恥ずかしい液体が溢れでるのをはっきりと感 じる。ハンカチが汚れちゃう……。昌夫くんに嗅がれちゃう ……。

 ひとみの正面に遠野がひざをついた。
 M字開脚させられたひとみの下半身が間近に見えている。

 ほぼ真正面から見るひとみの丘の盛り上がりは、やさしく ふくらんだ頂上付近から滑らかな反りを持つすそ野へと、微 妙な曲面が融合した溜め息の出そうな優美な造形で、胸や腰 のラインに劣らぬ普遍的な女性美に溢れている。

 その、下腹部で絶妙な曲線を見せる恥丘の盛り上がりは、 回り込むように股間へと連なり、ひとみの秘裂を挟む柔らか な堤防を形作っている。恥丘がそうであったように、ひとみ の堤防もやや高めに盛っていて、心地よい触感を想像させる 魅力的なふくらみを見せていた。

 ひとみの形状と触感は、ひとみと親密になるものを飽くこ となく堪能させることだろう。

 立てひざの遠野が、手のひらをひとみの太ももの付け根に 置いた。開かれるのだろうか。ひとみが微かに身構えた。
 だが逆に、遠野の両手はひとみの秘裂を閉じるように左右 から押しつけた。ひとみの堤防を左右から指で押さえている。
 「……ん。……」
 ひとみは、突起が挟まれる感触を感じた。
 秘裂の中で硬さを主張しているひとみの小さな突起が、遠 野の指により、やわらかな堤防に挟み込まれているのだ。
 間接的な圧迫による、微妙な刺激が伝わってくる。

 遠野の目が思わせぶりに笑った。
 「よーく、染み込むようにしなきゃね。ひとみちゃんのお つゆが」
 ひとみの堤防を押さえつけた遠野の指が、ゆっくりと上下 動をはじめた。
 「……んんんっ……」
 遠野は、皮下脂肪のゼリーにも似たみずみずしい弾力を楽 しむように左右の堤防をこすり合わせている。すでに溢れ出 るほどになっている秘裂の内側が、ぬるぬると互いにすり合 わさり、ひとみの突起に感触を伝える。

 先程ひとみを窮地に追い込んだ指戯に比べるとずっと微か で間接的な刺激だ。だが、オルガスムスの直前まで何度も追 いあげじらされた後での、意地悪く繰り返される微かな刺激 は、予想外に下半身に響いてくる。

 「……ぅぅぅ。……」
 ひとみは眉根を寄せてうめいた。

 意識がその部分に集中していく。指への渇望感が急激に高 まっていく。

 指は、挟む力に強弱を与えながら左右交互に上下する。ひ とみの左岸と右岸がリズミカルに上下に揺れ、秘裂がよじれ、 つつましい花弁がこすれ合う。そのすべての動きが、痛痒感 のような微妙な圧迫と振動と摩擦となって、秘裂の側壁に挟 み込まれた肉の突起に伝わってくる。微妙だが確実に響いて くる。

 こんな状態に置かれても、ひとみは自身の性的な反応をこ れ以上昌夫に見せまいと懸命に抵抗を続けていた。だが、遠 野の指は、ひとみに思い知らせていく。これまでの攻撃で感 度があがったひとみの身体が、感覚を研ぎ澄まされた小さな 肉粒が、どれほどの快感を産み出すかを。

 ひとみの仕上がりを探るように、ほんの気まぐれといった 感じで、刻みを細かくして素早く揺すってみる。
 「……く。……」
 とても押さえられなかった。それだけで反射的に腰がひく んと跳ねてしまう。

 「…んん。ぃゃ……」
 リズムが変るたびに、ひとみの震える声が漏れる。
 「ほうら、もっとおつゆを出しなさい」
 遠野は、ひとみの感受性を知りつくしているように、指先 のリズムと強弱を意地悪く変化させてひとみを翻弄し、魚の ように跳ねさせた。
 「ハンカチも下着もぐちゃぐちゃになるまで」

 ひとみは、たっぷりと粘液を含んで滑りあう感触に、その 部分が音を立てるのではないかと脅えた。
 昌夫くんにわたしの音が聞こえたら……。

 遠野は、ひとみの不安を見抜いたように、左右に広げる動 きを交えて堤防をすりたくる。自分の花びらが粘液の糸を引 いてねちゃねちゃと開閉するのを感じる。今にも音が立ちそ うだ。
 だめ……聞かれちゃう……だめ……。

 反応をこらえようとするほど、反応を見せまいと力むほど、 ひとみはぎくしゃくと腰を跳ねさせ、制服のまま開脚させら れた下半身の扇情的な動きを昌夫に見せつけてしまうのだっ た。昌夫は、ひとみの意図しない挑発のたび、茎をひきつら せ先端に雫を溢れさせた。

 「……んっ……んン……う……んっッ……うんっ……」
 指に躍らされるように、腰と背筋を跳ねさせ、ほとんど絶 え間なく髪を振り乱しながらも、ひとみはけなげに声を押し 止めようとしていた。執拗に送り込まれる快感に、泣き声に も似た歓喜の声をあげそうになる。それを、必死に口を閉じ てうめき声に変えるのが精一杯の努力だった。
 ……いや……だめ……。

 「直接触って欲しいんでしょう」

 口を開いてしまえば、声をあげてしまえば、自分がどうな ってしまうか自信が無かった。慎みもプライドも、人格まで 投げ棄てて、快感に身を委ねてしまいそうな自分が恐かった。
 ……だめ……。

 「ほじって欲しいの?」

 だが、もうひとみは限界だった。浅く短い呼吸を繰り返し ながら、切れ切れの吐息とうめき声を左右に撒きながら、避 けられない瞬間が迫っているのをひとみは感じていた。

 「指で、つまんで欲しいの?」

 指が動くたび、身体の芯から期待感が一起に沸き上がり、 酸素を求めて開かれた唇からはしたない声が噴出しそうだ。

 気がつけば、ひとみの耳にガムを噛むような品の無い音が 聞こえはじめていた。遠野の狡猾な指にもてあそばれ、ひと みの可憐な亀裂が粘液を攪拌し吐液する音だった。

 うわ言のようにひとみの唇から微かな言葉が漏れた。
 「もうダメ……」
 勝利を確信した目で遠野が問いかけた。粘液の刻むリズム が速くなる。
 「いきたいの? いかせて欲しいの?」
 「…………」
 葛藤の表情で返事をためらう。ひとみの頬は上気し、汗の にじんだ額には前髪が幾筋か貼り付いている。せわしいまで の攪拌音が絶え間なく鳴っている。
 「……ぅ……うううう……」
 ひとみの背筋が反り始める。ひとみは再び、その瞬間の間 際まで来ている。
 「どうなの?」
 絶望的なタイミングで、水音がふいに沈黙した。
 摘まむような形の遠野の指先が、ひとみの突起にそっと当 てられる。指は微動だにせず、ひとみを待っている。
 「………………」
 沈黙の重さにひとみの心が砕け、崩壊するのが、見えるよ うだった。

 目を伏せたまま、ひとみが微かにうなずいた。

 苦悶の表情は諦めへと変り、すべての抵抗を放棄したよう にひとみの身体からすっと力が抜けた。

 「いきたいの?」
 遠野はさらに確認を求める。
 「本当にいきたいの?」
 ひとみは顔をあげずに、もう一度うなずく。
 「聞こえないわ。声に出していいなさい。いかせて欲しい の?」
 「……いかせてください……」
 消え入りそうな微かな声だった。
 ささやくように遠野が繰り返す。
 「聞こえないわ」
 「……いかせてください……」
 「昌夫くんにも聞こえるように」
 ついに顔をあげ、遠野を見つめて、ひとみは懇願した。
 「……あぁ……いかせてください……お願いです……」
 黒目がちの瞳が揺れていた。

 「判ったわ」
 遠野はひとみの前髪をやさしく掻きあげながらささやいた。
 「可哀想に。こんなに濡れるまで我慢して。つらかったで しょう。今いかせてあげるからね」
 今にも泣き出しそうな表情のひとみは、おさな子のように こくんとうなずき、すがるように遠野の顔を見上げている。
 「ひとみちゃん、今いかせてあげるね」
 遠野はひとみの背後に回ると、後ろ手で拘束された手首の 左手側を椅子の背もたれに固定しなおした。右手首は静かに ひとみの太ももに置いた。
 「……」
 ひとみの右手は解放された。
 遠野の巧妙な指戯で頂点に追い上げられるのを予期してい たひとみは、意味が判らずぼう然としている。
 「本当にいきたいんでしょう?」
 助けを求めて見つめるひとみに遠野が宣告した。
 「自分でいじってごらんなさい。昌夫くんの見ている前で、 自分の指で思い切りいってみせなさい」
 「……そんな……」
 悲痛な表情でひとみは首を振った。
 「できません……。できません、わたし……」

 濡れて貼りついた布地が股間から引き剥がされる感触に、 ひとみが身震いした。遠野が、下着の中からハンカチを引き ずり出したのだ。

 代わりにひとみの手首をつかみ、下着の中へひとみの右手 を差し入れる。
 「……いや……」
 泣き出しそうな顔で弱々しく首を振るだけが、ひとみの唯 一の抵抗だった。
 下着にひとみの手の形が浮き上がり、指先が核心へと近づ いていくのが見える。遠野は位置を調整するようにひとみの 手首を動かしている。

 「……あぅ……」
 遠野が位置を決めた瞬間、ひとみは小さな声をあげてしま った。
 中指の先端がちょうどクリトリスの真上にある。その位置 でひとみの右手を下着の中に残したまま、遠野はそっとひと みの手首を解放した。
 「さ、自分でやってごらんなさい」
 「……ぃゃ……できません……」
 ひとみは目を閉じて首を左右に振る。手が動きだす様子は ない。
 「……できません……」
 下着越しに浮かび上がるひとみの指先を見つめながら、遠 野が満足げにささやいた。
 「してるじゃない、もう」
 だが、ひとみの手はじっと静止したままだ……。

 違う! 昌夫もようやく気がついた。ひとみの中指が、他 の指よりわずかに沈んでいる。指先をクリトリスに押し当て ているのだ。目を閉じたまま、ひとみはその感触を味わって いるのだ。

 「……できません……」
 「じゃあ、指を離してごらんなさい。あなたの大事な場所 から」
 ひとみの顔に強い努力の表情があらわれた。だが、ひとみ の手は動かなかった。指は押し当てられたままだ。

 遠野は、もうめんどくさい、という表情で、ひとみの手首 をつかみ、揺するように動かしはじめた。
 「……んン……んっ……はん……んン……」
 下着の中で指先がリズミカルに局部を往復するのが見える。 動きに呼応して次々に吐息が漏れ、ひとみは苦悩にも似た表 情で首をのけぞらせる。

 タイミングを見澄ましたように、遠野がひときわ素早くひ とみの手を揺さぶった。
 「……ああぁぁぁ……」
 ひとみの絶望的な声が砕け散り、教室中に散乱した。

 もはや明らかだった。遠野の助けを借りる必要もなく、ひ とみの手は動きはじめている。ひとみの指先は、小さな肉の 芽を正確になぞっている。

 ひとみ自身にも、もう手の動きをを止めることは出来ない。 絶望的な悲鳴がそう物語っていた。

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 7

 目を閉じたひとみは、午前中図書室で見たのと同じ真剣な 面持ちで、細やかに、絶え間なく指を使っている。昌夫は、 そんな自慰のしぐさにも、どこかひとみらしい几帳面さを感 じた。

 ひとみは下唇をかんで声を殺そうとしている。時おり、苦 悩に似た深刻な表情が浮かぶたび、微かにあごがあがりつつ ましい溜め息が漏れる。

 窓のサッシの外側で後ろ手に縛られている昌夫の手に、遠 野がひとみの下着から取り出したハンカチを握らせた。
 「いらなかったら、手を離せば捨てられるわよ」
 ハンカチは温かく濡れていた。昌夫の手に、ひとみの体温 と湿った感触が伝わってくる。

 「昌夫くんご覧なさい。ひとみちゃんの指の動き」
 下着にひとみの右手のシルエットが浮き上がり、指が動く たび関節が突出した。
 ひとみの指先は小刻みに上下し、あるいは円を描くように ひとみの核心にまとわりついていた。
 「ひとみちゃんは、いつもああやってしているのよ」
 「……ぁぁ……見ないで……お願い……」
 言葉とはうらはらだった。
 ふたりの視線に反応するように、中指の動きが加速し、う ねるように背筋を反らした。ひとみの背骨を快感が駈け昇っ ていくのが明らかに見て取れた。

 恐らく、ひとみは自覚していないだろう。ひとみの腰が揺 れるように動きはじめている。切なげな腰の動きにつれて、 白い下着の狭まった部分がよじれ、リアルな皺が刻まれる。

 官能の高ぶりをしめすようにときおり動きが大きくなり、 ひとみは唇を噛み、白い喉をみせて何かをこらえる。腰の動 きが、徐々に性行為を思わせる周期的な蠕動に変っていく。

 女の子の腰って、大きい。昌夫はそう思った。ひとみは小 柄な方だが、甘い体臭を放ちながら目の前でうごめいている 腰は、意外なほどボリューム感があってとても大きく感じる。 そのやわらかく張り出した輪郭に両手をかけて、指をめり込 ませてぎゅっとつかんで見たい衝動を感じる。

 自分を追い上げるように、中指の動きが素早く細やかな振 動に変ると、ひとみの大腿部の筋肉がきゅっと引き締まり、 腰が跳ねあがった。太ももの付け根にくっきりと筋が浮き上 がっている。

 「……ぁぁああ……」
 そのまま、しなやかにバネの効いた動きで腰がバウンドを はじめ、引き結んでぐっとこらえていた口からついに声が漏 れだした。
 「……んっんン……んっんっ……んっんン……」

 「もっと声を出しなさい」
 「…あン…ぁぁ…あン…んっ…あン…んんっ…あんっ…」

 ひとみは全力疾走を始めていた。無意識に腰を使い、快感 に悶える全身とは別人格のように、ひとみの右手だけが、懸 命に働き続けている。恥丘に載せた手首を支点に指先が小さ な円を繰り返し描いて、ひとみの秘めた宝石のありかを昌夫 に教えていた。

 「恐くないわ。隠しているものを全部さらけ出しなさい」
 遠野がひとみに最後の激を飛ばした。
 「声に出して言いなさい」
 「……いっちゃう……」
 「自分を信じなさい。今の自分を受け止めなさい」
 「……ああ……いっちゃう……」
 「思いっきりいってしまいなさい」
 「いく、いく、いく……」

 感極まったように、ひとみの声がかん高くなった。
 「あぁ……あ……ぁぁぁ……い…」
 ひとみのちいさなあごが上がり、苦しげな表情がのけぞる。
 「…く…ぁぁぁ」
 M字開脚の太ももが限界までぎゅっと開き、突っ張った。
 「ぁんっ! ンっ!」

 その瞬間、極限まで膨れ上がった快感が一度に破裂し、ひ とみの体内を一気に貫通した。宙に浮いた腰がひときわ突き 出され、渾身の力を込めてぎくんぎくんと律動した。

 ひとみの新鮮な身体は、無防備なまでに全身でオルガスム スを表現していた。待ちこがれた絶頂の快感に、開かれた桜 色の唇から悦びの声が溢れ、のけぞった背筋が呼吸とともに 震える。痺れるようなエクスタシーが全身に脈を打って浸透 し、それに共振して量感のある太ももが痙攣し、ひくつくの が手に取るように見えた。なめらかな下腹部の内部で、ひと みの柔らかな肉の器官がけなげにキュンと収縮するのさえ感 じ取れるほどだった。

 昌夫は、あどけないひとみが絶頂に達し、快感に全身を震 わせ乱れるのをぼう然と見守った。半ば信じられない気持ち だった。子供っぽいと思っていたひとみがオルガスムスを味 わっている。自らの手で快感に浸り、酔い痴れている。

 M字開脚のままぎゅっと突き出されていたひとみの腰がが くりと落ちた。素直な髪がさらりと揺れて苦悶に似た表情が ゆるみ、快感に溶けそうな表情へと変った。やっと手に入れ た絶頂を手放すまいとするように、達した後もひとみの中指 はぎゅっと秘裂に押し付けられたままだ。

 目を閉じたまま椅子の背もたれに力なく身体をあずけ余韻 に浸るひとみを、遠野と昌夫は無言で見守った。

 緊張の極みにあった先程とは一転して、開脚したままぐっ たりと力のぬけたひとみは、別人のように艶めかしかった。 汗ばんだ全身から、熱を帯びた股間から、ひとみの甘い体臭 が一層濃く立ち昇り、昌夫の嗅覚を痺れさせた。

 やがて、悲しげな表情でふわりと瞳を開くと、大粒の涙が 紅潮した頬を伝って滑り落ちた。自分の達した姿を、いや、 みずからの指でむさぼるように快感を求める姿を昌夫に見ら れてしまった……。指づかい、身体の反応、その表情、自分 の秘密すべてを。

 ひとみをなだめるように、遠野が口を開いた。
 「自分の感覚を信じなさい。自分の身体を信じなさい。自 分以外に、信用できるものは何もないのよ」
 ひとみの目の高さまで降りるように、遠野がしゃがみこむ。
 「本当の自分を受け入れれば、もう恐いものは何もない わ」
 遠野の言葉に聞き入りながら、ひとみは吸い込まれるよう に遠野の目を見つめている。ひとみの右手はまだ下着の中に 差し入れられたままだ。
 「一回で満足なの?」
 「……」
 ひとみの視線がためらうように揺れ、ひと呼吸、答えに間 があった。
 「どうなの?」
 ひとみが小さく首を振った。
 「もっといきたいの?」
 微かに、ひとみがうなずいた。
 「声に出して言ってごらんなさい」
 「……もっといきたい」
 「指を動かしながら言ってごらんなさい」
 ひとみの指先が動きはじめた。
 「……もっといきたい……もっといきたい……」
 「昌夫くんを見なさい」
 ひとみが昌夫に視線を投げかけた。昌夫もひとみの動きを 見守っている。
 「昌夫くんに……見られてる」
 立て続けに二度射精したにもかかわらず、昌夫の股間は少 年らしい回復力できりりと復活し、起き抜けの新鮮なペニス のような急角度の屹立をひとみに見せつけていた。
 「昌夫くんが……わたしを見て、大きくしてる」
 ひとみの視線が、血管を浮かせた裏筋をたどって這い上が り、エネルギーを秘めて脈動する亀頭に見とれるように吸い 寄せられるのが、ありありとわかった。
 「あんなに……あんなに大きくしてる」
 男根を完全に勃起させた昌夫と正面から向き合いながら、 ひとみが二回目の自慰を始めた。

 ひとみを挑発するように、遠野が昌夫をからかってみせる。 指先でつつかれ、撫で上げられるたびに、亀頭を跳ねさせ、 茎をひきつらせる昌夫を見つめながら、ひとみは激しい自慰 に耽っている。
 「…んっ…んっ…んっんっ…あああ…んっんっ…」

 遠野が、昌夫の先端の雫を指先ですくい上げた。
 「本当に興奮しないと、こんなにたくさん出せないわ」
 ひとみの反応を横目で見ながら、その指先を口に含み、昌 夫の若い体液を見せびらかすように賞味する。
 見つめているひとみの行為にいっそう熱がこもるのが、手 に取るようにわかる。

 さらに、裏筋に親指を押し当てて、溜まった先走りを根本 から先端へと搾り出し、流れ落ちそうな程溢れる滑液を指に からめ取る。
 「ふふふ、もう精液も、根元までこみあげて来てるんでし ょう」
 再び、ちゅぶっ、じゅちゅっ、と耳ざわりな音を立てて指 をすすってみせる。
 ひとみの動きが激しくなり、声が熱くなりはじめる。
 「……はぅ……んっ……ふ。……あ。……」

 「聞いてごらん。ひとみちゃんの音。ほら、音が聞こえる」
 ひとみは音を立てて激しく指を使っていた。
 「あああ、聞かれてる……」
 鳥肌が立つほどの興奮がひとみを襲った。まったく予想外 だった。ひとみは衝動的に、手のひらを恥丘にぶつけるよう な激しい指使いで、指と肉と分泌液の絡み合う派手な摩擦音 を立てて、聞き耳を立てる昌夫を圧倒した。
 「ほら、あんなに音を立てて。ひとみちゃん、いきたくて たまらないのよ」

 ひとみの右手は全ての抑制が外れたように大きく奔放に動 き、浮きあがった下着と太ももの隙間から、ひとみの世界を 垣間見せた。

 ひとみの淡い陰毛。ほのかな色に縁どられた端正な肉裂に 指先を割りいれ、あからさまな音を立てながら第二関節まで 濡らして自らを責めたてるひとみの激しい指使い。入り組ん だ内側の起伏に沿うように小さな泡を浮かべ、可憐なひだの 外側まで溢れているひとみの体液。そして、ひとみの内部の 驚くほど鮮烈なピンク色。すべてが昌夫の眼に焼きついた。

 熟練を感じさせた遠野の指戯とは対照的に、ひとみは憑か れたように無我夢中で指を使っていた。指の腹でひだの上端 に半ば埋もれた感覚器をもどかしげに、せわしく擦りまわす。 こねるような指の動きにひとみの秘裂が上下左右にぐねぐね と変形し、その柔らかさを強調する。時にひだの内側を遠慮 ない音を立てて攪拌し、湧き出す蜜液を指先ですくいあげる。 指に絡んだひとみの体液が泡立ち、白濁する。

 ふと、ひとみが紅潮した横顔を見せて昌夫から顔をそむけ た。激しく行為を続けながらも、恥じらいに顔を隠したのだ ろうか。

 「……んっあン……あっ……んっんっ……はぅ……」

 そうではなかった。匂いを嗅いでいるのだ。ひとみは肩に 頬を寄せるようにして、先程制服の肩口に飛んだ昌夫の精液 の匂いを嗅いでいる。栗の花のようなツンと鼻をつく昌夫の 匂いを嗅ぎながら、激しい自慰にふけっている。

 「……はああぁぁぁ……」

 快感のうねりに合わせて、ひとみはあられもなく腰を使い、 恥ずかしいほど本能的なしぐさで腰をグラインドさせた。ま るで存在しない男の肉体に恥骨を擦り付けようとしているよ うだった。

 「……く。……ふ。……」

 ひとみの指づかいが、花弁の上端にひとみが秘した宝石を すり潰すような動きに収斂しはじめた。

 「……んんんんん……あ。あああ。あ。……」

 やがて、ひとみが顔を上げた。激しく指を動かし、腰を使 いながら、何かを訴えるように昌夫を見つめた。ひときわ大 きく息を吸い込み、疼痛に耐えるように目を閉じると、ゆっ くりと首がのけぞり一旦静止した。

 達した瞬間、ひとみの声が消えた。

 首をがくがくと揺らし、椅子が倒れるのではないかと思わ れるほど、ひとみの全身が間欠的に引きつり痙攣した。一回 目よりオルガスムスが深かったのだろうか、絶頂感を訴える ように開かれた口は震えるだけで声すら出ない。ひとみの内 部は再び収縮を繰り返して、男の器官から懸命に精を搾り取 ろうとしていることだろう。

 「……くはっ……はっ……ふうっ……んふ……」
 体内の収縮に合わせるように乱れた吐息が漏れ、ひとみを 揺さぶる快感のリズムを伝えた。

 快感の頂点で静止したひとみの指を、突然下着の上から遠 野の指先が押さえつけた。
 遠野の指先が、ひとみの指にぐにぐにと揉みこむような動 きを強制する。つよい快感の波が、ひとみの全身を揺さぶり、 途切れていた声が一気に噴き出はじめる。
 「…ああんン……うううんン……はあああっ……」
 「声に出して」
 「…うううう……んああああっ……」
 「言いなさい」
 「…あうぅぅ……いい……」
 遠野に押さえつけられ動きを強いられる指先は、意表を突 いた運動と緩急とで予想外の快感をひとみに強制した。ひと みは、呼吸を整えるゆとりも与えられず、次の頂上へと押し 上げられ始めていた。
 「…きもち……いい……」
 「そんなにいいの?」
 「…いい……ぅぅン……いい…」
 「どこがいいの?」
 「…あ…そこ……」
 「だめよ。ちゃんと言って」
 「…ああ…く……」
 言いかけた口の形のまま、ひとみは言葉にできないでいる。 遠野の指が、小刻みにひとみをせきたてた。
 「…あんっ……ク…リ…トリス……クリトリス…クリトリ ス…」
 「もっと言ってごらん。昌夫くんにも聞こえるように」
 「…クリトリス……クリトリス…いい…クリトリス…」
 「ひとみちゃん、今なにしてる?」
 「…オナニー……オナニー……」
 「いつ覚えたの?」
 「…さいきん……」
 「自然に覚えたの?」
 「…あんんっ……ざっし……」
 「雑誌を見てて」
 「…あんン……さ……わって……」
 「自分で触ってみたのね」
 「…んんっ……ずっと……さわって……」
 「ずっと触ってたら、いっちゃったのね?」
 「……ぁぁぁ……」
 「それで味を覚えちゃったのね? 病みつきになっちゃっ たのね」
 「…いつも……あんっ……いつも……」
 髪を振り乱してひとみがうなずく。
 「いつもしてるのね。興奮するとすぐ濡れちゃうのね」
 「…は…ずかしい……わ…たし……」
 「恥ずかしかったら、するの止めれば」
 「…だめ……やめられな……オナニー…やめれない……」
 「いつも一回で終わりなの?」
 ひとみが首を振る。
 「…な…ん…かいも……」
 「何回もしてるのね、いつも。そうなのね?」
 「…いっぱい……いっぱい…」
 「覚えたばっかりで、したくてたまらないのね? 大好き なのね?」
 「…あああ……すき……すき……オナニー…すき…」
 「どう? 今日のは」
 「…す…ご…い……いつもより……ずっと……」

 思わせぶりな指先のフェイントに、ひとみの小さなあごが ひくりと反応し、肩をすくませて身構える。細かく揉みこま れる指先に、はしたない声をあげながら苦悶の表情をのけぞ らせ、まつ毛を震わせる。助けを求めるように開かれた唇の 中に、綺麗に澄んだ色の舌がのぞく。

 遠野の指先に翻弄されるたび、ひとみは期待と驚き、苦悩 と悦びをきらきらと交錯させて、この年頃の少女特有の新鮮 な表情を惜しげもなく溢れさせた。

 昌夫は、ひとみの動きにシンクロするように茎先を踊らせ ながら、遠野の指使いに1秒ごとに反応するひとみの可憐な 表情に見とれていた。

 「可愛い」とは顔だちが整っていることだと、昌夫は素朴 に信じていた。だが、今、遠野の指に操られて泣き声にも似 た声をあげ、全身を震わせている、ひとみの切ない表情ほど いとおしいものを昌夫は見たことがなかった。

 今、自分は女の子の一番可愛い瞬間を見ている、そう思い、 昌夫は素直に感動していた。と同時に、両手が使えない状況 がたまらなくもどかしかった。

 ひとみが遠野の目を見つめた。
 「…ぁぁぁぁ……せ…ん…せ…い……」
 「なに?」
 「…い…き…そう……」
 「いきなさい。我慢しなくていいわ」
 「…せんせい……お…ね…が…い……」
 「なに?」
 「…や…め…な…い…で……せんせい……おねがい……」
 「やめないわ」
 「…せんせい……い……か……せ…て……」
 「いいわ。私がいかせてあげる。私の指でいかせてあげる わ」
 「…い…か…せて……い…かせて……」
 手首を握り、遠野はひとみの手を下着から抜き出した。太 ももに、力なく置かれたひとみの右手は指先だけでなく、手 のひらまでべっとりと濡れていた。

 遠野が下着の中に指を侵入させた。ちいさな茂みと柔らか な丘の上を指先が滑っていく。下着の上から、遠野の指の位 置がはっきりとわかる。
 「……くぁぁぁ……」
 熟知した同性の指が、ほとんど探る様子もなく目標を捕ら えたとき、小さく震える悲鳴が漏れた。自分以外の指が、初 めて触れた瞬間だった。

 感覚器をふちどるひだを指先でかき分け、包皮を押し下げ るように指先が動く。
 「…っあ。」
 ひとみの両目が大きく開かれ、足の指がきゅっとつぼまっ た。下着をつけていなければ、収縮したひとみの内部から体 液が溢れ出すのが見えただろう。
 「…んんっ。」
 指先がひとみの粒を露出させていた。
 「まだ直接は痛いわね」
 粒を挟み込んだまま指は静止している。
 「だいじょうぶ。ひとみちゃんの大きさを確かめてみただ けだから」
 遠野はひとみの大きさを味わうように、露出した核に触れ 指先でそっと探っていたが、やがて指の力がゆるみ、包皮が 戻った。ひとみが止まっていた息を吐く。

 粒に触れた指先の匂いを嗅ぎながら、遠野がささやいた。
 「かわいい」

 再び指を下着に沈めると、遠野は決意を秘めた表情で、ひ とみの潤沢な体液を指先に絡め、直接ひとみを慰め始めた。

 「ほら」
 「……んっ……」
 「ここよね」
 「……はん……ふ。……」
 「こう?」
 「……あんっ…す…ご…い……」
 「こうでしょ?」
 「……か…んじる……せん…せいの……ゆ…び…」

 ひとみの若さを考えて、遠野は激しい指づかいを控えてい た。それでも、自分の指でしか触れたことのないひとみには、 腰まで痺れが来るような刺激と快感だった。

 「……ふ。…あ。……い…き…そう……」
 ひとみの右手が遠野の腕にしがみつく。
 「いきなさい」
 遠野の手が周期的にピッチを上げて最後の追い込みにかか る。
 「……ぁぁ……いく……」
 ひとみの右手がぎゅっと遠野の腕をつかんだ。
 「……せんせい……いく……」
 太ももの付け根に窪みができ、ひとみのふくらみを強調す る。密着した下着に浮かび上がった遠野の指が容赦なく音を 立てる。
 「……ぁぁぁ……あぁぁぁ……せ…ん…」
 両脚にひゅんと力が入り、腰が浮き上がった。
 「…せ…い……」
 腰を浮かせたまま、ひとみは頂点を極めた。瀕死の野生動 物のように、不規則な痙攣が全身を走る。

 ひとみのオルガスムスの律動に合わせるように、遠野の指 は断続的に動き続け、ひとみの末梢神経のすみずみまで妥協 無く絶頂を行き渡らせた。
 焦点の定まらない視線を懸命に遠野へ泳がせて、ひとみは 初めて経験する長く深いオルガスムスの快感を訴える。遠野 の指は、さらに動いて入念にひとみの絶頂を仕上げた。

 脱力したひとみが、遠野にすべてをあずけたようにうっと りと余韻の中に浮かんでいる。昇りつめたひとみを静めるよ うに、遠野はひとみの髪と頬をやさしく撫でている。
 生まれて初めてだった。ひとみは、人に身をゆだね、オル ガスムスへ追い上げられる快感を知ってしまった。その充実 感と余韻を経験してしまった。
 ひとみは遠野の手のあたたかさを心地よく受け止めていた。

 「おや、まだ捨てないで大事に握ってたのね」
 遠野が後ろ手に縛られた昌夫の手を覗きこんだ。手の中に は先程のハンカチがしっかりと握られている。
 「嗅いでごらんなさい、ひとみちゃんの本当の匂い」
 ひとみを見つめる昌夫の鼻先に、遠野がハンカチを押しつ けた。ぬるぬるする感触と共にハンカチの匂いが鼻腔にひろ がった。

 ネイビーブルーのスカートと対比をなす白い下着の中でも、 やわらかな小丘から幅の狭い二重の布地へつらなる部分は、 とりわけ人目にさらすことの無い部位だろう。そして今、昌 夫が嗅いでいるのは、その最も人目に触れない部分に秘めら れた、ひとみの最も秘密の匂いだった。
 これがひとみの匂い……。

 ひとみは、予想外に女の匂いを立てていた。

 「もう……もう我慢できない!」
 限界まで勃起した肉茎を震わせながら、昌夫が訴えた。
 「どうしたの? まだ足りないの?」
 昌夫がうなずく。
 「ひとみちゃんで、いきたいの?」
 「ひとみでいきたい。ひとみを見ながら……」
 言いかけて、昌夫の言葉が途切れた。違う……それは違う。

 昌夫は、ひとみを見つめた。
 窓から降り注ぐ陽光を全身に浴びながら、ひとみが昌夫を 見上げている。まだほのかに赤みが残る頬が愛らしい。椅子 に拘束され、開脚させられ、あれほど激しい絶頂を見せなが ら、なおひとみは可憐な少女として、昌夫を見上げていた。

 「ひとみと……」
 昌夫が、ひとみに告白した。
 「ひとみと、一緒にいきたい」
 「昌夫くん……」
 きらめく髪を揺らして、ひとみがこくりとうなずいた。

 ひとみが、みずから右手を下着の中に沈めた。昌夫の目を 見つめたまま、ひとみの指先が下着の中で動き始めた。

 ふたりを見守っていた遠野が、若いエネルギーをみなぎら せた昌夫の茎に指を絡める。

 「わかったわ。ひとみちゃんの代わりに、してあげる。最 後の一滴まで全部搾り出してあげる」

 昌夫は遠野の手に激しく腰をグラインドさせずにはいられ なかった。溢れ出る先走りが、遠野の手指に音が立つほどま とわりついてくる。

 昌夫は遠野が仕組んだことだと思っていた。
 遠野は音楽準備室で早坂教頭を調教しようとしていたに違 いない。だが、鍵を閉め忘れた音楽室にふたりが入ってきた。 それに気づいた遠野が、壁の肖像画をふたりが見上げている 背後で、ひとみのカバンに細工をしたのだと。
 しかし、昌夫は確信できなくなっていた。あの雑誌は本当 にひとみが持っていたものかもしれない。そして、もしかす ると、あのコンドームも……
 だが、そんなことはもうどうでもよかった。

 また、快感がふたりを包み込み、逆らいようのない大きな 流れとなって、皮膚の上を、身体の内部を音もなく流れてい く。海流のように、ふたりを遠い沖合いへと押し流していく。

 昌夫とひとみは激しく性交していた。いや、2メートルの 距離をへだてたまま、まるで性交しているように見えた。ふ たりは、再び迫ってくるオルガスムスに背筋をぞくぞくと震 わせながら、見つめあい、お互いを求めて思いきり声をあげ、 激しく腰をグラインドさせ続けるのだった。

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 8

 一週間後、昌夫は再び音楽室の扉の前に立っていた。

 あのとき遠野は、来週の日曜も鍵は開けておくと言った。 混乱と動揺がおさまらない昌夫の脳裏に繰り返し浮かぶのは、 遠野のその言葉だった。

 本気で言ったのだろうか。音楽室の中で遠野が待っている のだろうか。今度は何が起こるのだろうか。遠野はなぜ、あ んなことをしたのだろう。自分はどうなってしまうのだろう。 わからない。わからない……

 そんな疑問を何度も反芻しながら、昌夫の足は学校へ向か っていた。

 あれから、昌夫とひとみは他人に気づかれないようそれと なくお互いを避けながら、気まずい一週間を過ごした。ひと みとは同じクラスであるだけに、昌夫はかえって気詰まりだ ったが、自分から話しかける勇気もなかった。

 音楽室の扉を見つめながら昌夫は思った。ひょっとすると、 ひとみもここに来るだろうか……まさか……わからない……。 そもそも、本当に鍵は開いているのだろうか。

 やっぱり、引き返そうか……。静まり返った廊下に、汗ば んだ手を握りしめて昌夫は立ち尽くしていた。緊張が心臓を 締め上げ、手足が震えそうになる。だが。

 扉の前で迷っていてもしかたない。意を決して、昌夫は音 楽室の扉に手をかけた。

 日曜の午後は、まだ始まったばかりだ。

 

 謝辞

 対面位置で拘束されたカップルという、この文章の発想の 原点となった設定および、拘束した女性に官能小説の音読を 強制するというアイデアは、団鬼六氏の『花と蛇』より借用 しました。

 また十代女子の自慰については、雪(すすぎ)さんの教え を受けました。私の変に細かいセクハラまがいの質問に懇切 に答えていただいただけでなく、草稿への貴重なアドバイス もいただきました。

 ここに記して尊敬と感謝の意を表したいと思います。

 

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