[mokuji]

 果実

text / tagotago

 気がつくと彼女が僕の股間を覗きこんでいた。

 「どれくらい溜ってるのかしら」

 僕はテーブルの上に全裸で手足を縛りつけられ、あお向けに寝かされている。 大きく割り開かれた両脚は、太ももから先がテーブルの端から出て、ぶらさが った足首はテーブルの脚に縛りつけられている。

 「楽しみだわ」

 彼女はクッションを持ってきて僕の腰の下に入れた。腰が持ち上がって ペニスを頂点にしてのけぞるような姿勢になる。

 彼女が僕の身体を撫ではじめた。僕の反応、いや僕の両脚の間に息づいてい る肉の感覚器の反応をじっと観察しながら、首筋からわき腹へ、太腿の内側か ら腹筋へと指先を引きずるように滑らせる。

 「ふふ、我慢してるの? いつまで続くかしら」

 彼女の目に男の器官の下劣な変貌をさらしたくはなかった。僕は目を閉じて 必死でこらえようとするが、皮膚の上を彼女の指先がすっと滑るたびに、その 感覚が僕の器官の先端までじんと響き、器官の内部に血流が流れ込んでいくの が自分でもわかる。

 僕の器官は脈を打って膨張しはじめた。 彼女の視線が痛いほど絡みつくのを感じながら、僕は血管をグロテスクに浮き 上がらせ、先端部にツヤまでも帯びさせてしまう。

 僕は完全に勃起してしまった。

 「どうしたの? もう降参なの? まだ直接触ってもいないのに、こんなに 興奮しちゃって」

 彼女は僕の大きさ、形、色合いをじっくりと鑑賞し始めた。

 「使い込んだ色合いじゃないけど、大きさはまずまずね。長さは普通だけど、 その分太さがあるもの」

 「なによりこの角度が素敵だわ。ほら、ほとんど反りが無いのに先っぽがお腹に付きそう」

 「つっ!」
 なんのためらいもなく彼女は茎裏を指先で弾いた。僕の弾力を確認している のだろう。屈辱感でいっぱいになりながらも、僕の器官はびくびくとあからさ まに反応してしまう。

 亀頭に鼻先を近づけ、すんすんと匂いを嗅ぐ。
 「ああ、やっぱり若い香りするわね。いい匂い」

 「さ、判ってるわね。それじゃいよいよ……」

 僕が全身を緊張させて身構えるのを楽しむように、彼女は一呼吸置いて言っ た。

 「キミの精液を搾るわよ」

 茎裏を指先で上下になぞり返す。

 「キミの溜め込んだ男汁を全部搾り出すわ」

 彼女の指が僕の肉に絡みついてきた。

 「覚悟しなさい」

 まるでストローを口にするような優雅な手つきで指を添え、彼女は感触を確 かめるようにそっと亀頭に唇を当ててきた。彼女の唇のしわ一本一本まで感じ とれるような軽いタッチのキスだ。亀頭独特の張りのあるすべすべした感触を 楽しむように、左右から裏側からと幾度も唇を触れてくる。

 陰茎にごつごつと浮き出てはち切れそうな血管は、剃刀を当てたら鮮血が噴き出そ うだ。彼女はじっと唇を静止させる。僕の鋭敏な先端部が脈動する感触、肉茎 に充満する男の血流の感触を唇で味わっているのだ。

 やがて彼女は唇の密着度を高め、熱い唾液を絡ませながら肉茎のそこここに 音も無くねっとりと唇を吸着させてくる。

 ぎゅんと反応し逃げようとする茎に指を添え、円を描くように舌先を亀頭に 絡みつけてくる。腹を打つほど反り返ろうとする肉茎は、僕の意志を無視して 竿の動きを彼女の舌と指にしっかりと伝え、彼女を楽しませてしまう。

 舌でくびれをなぞられる。カサの張りを確認するように段差を舌先で弾き舐 めあげられるたびに、僕の全身にぴくりと緊張が走る。

 彼女は首をかしげて、僕の褐色のアナルを覗きこんだ。指で輪を作り肉茎の くびれた部分を回すように刺激されると、僕のアナルは情けないほど素直に彼 女の手の動きに反応し収縮を繰り返してしまう。

 彼女が音を立てず上品に僕を口に含む。同時に彼女の両手は、僕の腹筋や太 腿部を滑るように撫で回している。はち切れそうなほど興奮し膨張した男根で 口内を満たしながら、筋肉質の身体を愛玩している彼女の表情は充実感に溢れ ている。

 唇から発せられる微かな音、口内と舌先の動きが発する湿りを含んだ微細な 音、そして彼女の「…ん…んっ…ん…」という吐息だけが聞こえてくる。彼女 の口唇から僕の屹立した感覚器に送り込まれる熱を帯びた刺激が、痺れに似た 波紋を描いて僕の全身に広がっていく。

 ふと、唾液の糸を引きながら唇を離すと、亀頭裏に舌面を当ててふるふると はためかせてみる。身体と竿をよじるように緊張させそり返る僕の反応を彼女 は観察している。茎肉が緊張するたびに次々と先端に溢れ、流れ落ちようとす る透明な分泌液の滴を、そっと唇をあて一滴一滴吸い取っていく。一滴すする たびに、口内に広がる僕の味を賞味するようにじっと僕の目を見つめる。

 彼女が唇を引き締め、絞り上げるように唇を上下させるたび、僕の両脚にぐ っと力が入り筋肉が浮き上がる。彼女はその反応を楽しむように含み笑いを浮 かべて、上下動に緩急とひねりを加えてくる。

 一気に追い上げるかのように四、五回素早く往復したかと思うと、顔を左右 にひねりながら唇を引きずるようにねっとりと上下させる。僕の表情の変化、 呼吸の乱れ、身体の反応を観察しながら、僕をもてあそぶように素早い口技と じらすような愛撫を繰り返してくる。僕の体内は彼女に加熱され、攪拌され、 痺れるような快感とズキズキと神経に響く快感が交錯している。

 「そろそろ限界なんでしょう」

 僕に挑戦するようにそうささやくと、彼女は明らかに僕を搾りにかかった。

 再び素早い吸引動作が始まると、それに連動して彼女の右手が僕の竿を無慈 悲にしごき立てはじめた。

 ここで崩壊してはならない。僕は必死の抵抗を試みた。だが、意地悪く限界 の直前でじらされ、もてあそばれていた僕の肉体は奴隷のように卑屈に彼女の 唇と手を求めてうごめき、彼女の神のような唇と手が送り込む快感を意地汚く むさぼろうとするのだった。

 彼女は一気に勝負をつけようと、手加減なく僕を吸い、舐め、しごき、こす りたてる。肉茎に塗り込められた、僕と彼女が分泌した滑液と唾液の濃い匂い が発散する。

 彼女は左手の指先で僕の陰嚢を撫で回しながら、その位置を確かめている。 先程まで竿をしごかれるたびにぴたぴたと音を立てて上下していた僕の陰嚢は、 今はぎゅっと引き締まって茎の方へ移動してきている。

 僕の腰がチリチリと震えはじめた。全身の筋肉が引きつり、ブリッジするよ うに僕の腰がテーブルから浮き上がった。彼女の左手が僕の腰の裏側に回り込んだ。僕は歯を食い縛り拳を握り締めた。浮き上がったままの腰ががくがくと震える。彼女は容赦なくひときわ厳しく僕を責める。

 「うぅっ!」

 押し殺した呻きを発した瞬間、僕は腰をさらにぎんと突き上げた。彼女の口 内深く肉茎を咥え込まれたまま、ぎゅくぎゅくと腰を突き上げ律動させる。

 僕の防衛線は突破された。彼女の過酷な口唇に僕は屈伏し、これまで体内に 貯え限界まで守ってきた精を、断末魔のように鈴口から噴き出させる。

 白熱した濁液が口内に激しく噴射され溢れかえる。口内でなければ数メ ートルは飛んだだろう。この時を待ち望んでいた彼女は、僕の生命力とエネル ギーが込められた精液の勢いと熱、口いっぱいに広がる濃厚な男の味を味わっ ている。その表情は達成感と充足感に満ちている。

 一連の律動がおさまった後も、一滴も逃すまいと彼女は吸引動作を続け、深 いオルガスムスに達して過敏になった僕をさらに呻かせ、幾度となくのけぞら せる。

 やがて心ゆくまで僕のエッセンスを搾り抜いた彼女は、ちゅぷっと微かな音 を立てて名残惜しげに唇を離した。

 微かにあごを上げ、彼女はうっとりと目を閉じ至福の表情で、口内に満ちた新鮮な体液を舌上で転がしている。凝縮された濃厚な男そのものの味を味わっている。

 薄く開かれた唇の間から、彼女の吐息とともに僕の精の匂いが溢れ出す。僕 の敗北した証しであるその新鮮な青い匂いを彼女はうっとりと堪能している。 彼女の唾液と混ざり合っても消えることのないきつい匂いが部屋中に充満する。

 彼女は陶酔した表情で目を閉じたまま、舌上の体液を嚥下しはじめた。何度 かに分けて、味わいながらゆっくりと飲み込んでいくのがはっきり判る。一呼 吸置いて、彼女が口を開いた。

 「立派よ。若いのによく我慢して溜めていたわね。粘りも強いし、量もたっ ぷり。飲みごたえがあったわ」

 彼女に好き放題吸い回され、手加減無くしごきたてられた肉茎は無残に充血 し痛々しい程だ。だが彼女は容赦せず、茎裏に指を押し当てて両手で尿道を絞 り上げ、舌先を尖らせてにじみ出た残液を鈴口を分けるように舐めとり、さら に唇を押し当てて吸い切った。

 「ひさしぶりに搾りがいのある身体だったわ」

 そう言いながら彼女は指先で陰嚢を撫で上げている。エネルギーを使い果た したはずの僕の肉茎は、しかし、見る間に復活を始めてしまう。

 ほとんど完全に屹立した肉茎を惚れ惚れと眺めながら、彼女は再び僕の亀頭 に指をかけた。

 「さすがに回復がはやいわね。さっそく二回目にかかろうかしら。今日はうんとしごくわよ」

 

[mokuji]