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 北風と太陽

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 8 アンケート 劇場版

[2]のもうひとつの続編)

 8-1

 「これで、男子の性的興奮と射精の仕組みは、みんな理解 できたね」
 黒板から外した人体断面図を巻きながら亜由子が言った。
 「でも性的興奮っていうのは、別に特別な出来事じゃなく て、みんなにとって、とても身近で、自然なことなの。その ことを実感してもらうために、」
 亜由子は教室を見渡した。
 「これから男子に実践してもらおうと思います」
 言葉の意味がピンと来ないらしい。生徒たちはとまどった 表情だ。
 「名前を呼ばれた男子は、性的興奮と射精の様子をクラス のみんなに見せてあげてください」
 「えーーーーっ」
 教室がざわめく。観察する側の女子は、おおげさに恥ずか しがって見せてはいる。が、表情はお気楽なものだ。一方、 男子の方は少なからず深刻な表情だ。
 「何をしたらいいかわかるよね? キミたちが普段してる ことを、ここですればいいだけ」
 男子生徒の反応を予期していたのだろう。心配しなくて大 丈夫、という笑顔で亜由子は人体断面図を握った右手を軽く 上下に動かして見せた。
 「ね?」

 「じゃあ、授業の始めに記入してもらったアンケートを参 考にして、協力してもらう男子を決めましょう」
 自分は何かマズイことを書かなかっただろうか? 必死で アンケートの答えを思い出そうとしている男子生徒たちを見 回して、亜由子がアンケート用紙の束を一枚ずつめくり始め た。
 紙をめくる亜由子の仕草に引き込まれるように、教室が静 まり返る。
 「もちろん、自慰の習慣がある男子で…」
 アンケートと男子生徒の顔を一人ひとり見比べていく。男 子の表情が目に見えてこわばる。
 「無理矢理できることじゃないから、今日できるコンディ ションの子で…」
 アンケートをめくる亜由子の手が止った。その一枚を抜き 出して無言でもう一度目を通している。

 ほんの数秒の、息詰まる長い沈黙のあと、亜由子が生徒の 名前を口にした。
 「浩平くん」
 教室の静寂が浩平の声をかすれさせる。
 「…はい…」
 「最後にオナニーしたの、三日前って書いてあるわね」
 浩平が小さくうなずく。
 「その間、夢精とかした?」
 無言のまま首を振る。
 「じゃあ、」
 亜由子が浩平を見つめた。
 「きっと溜まってるね」

 「それだけじゃないの。アンケートの5番目の項目に『同 級生』って答えてるでしょ」
 浩平がますます固まる。
 「つまりこのクラスの中に、浩平くんが一番お気に入りの」
 耳まで赤くなる浩平。
 「オナペットがいるわけね」
 亜由子は穏やかに続ける。

 「もしかしたら、その子に行為を観察されるのは恥ずかし いかもしれないわね」
 「……」
 「でも逆に、自分が毎日オナペットにしてる子に見られな がら行為をすることが励みになって、実践しやすくなる場合 もあるの。実践って、そういう励みがないとやっぱり大変な のよ」
 亜由子が浩平を見つめる。
 「浩平くんも、そういう気持ちあるんじゃないかな?」
 「…そんな…こと…ないです……」
 「きっと忙しかったんだよね。三日もできないって」
 浩平が微かにうなずく。
 「じゃあ今日は、その子でするつもりだったんだ」
 「……」
 「その子に見て欲しくない? 三日分」
 「…そんな……」
 ほとんど聞き取れない声で浩平が否定する。
 「浩平くん、立ってみて」
 浩平は動かない。
 「立てないよね」
 亜由子は優しく浩平の退路を断った。
 「もう勃起してるんだよね」

 8-2

 教卓の陰に浩平の下半身を隠すよう立たせ、足元に亜由子 がしゃがみこんでいる。
 「もう少しガマンして、ピクピクしないで……根元までく るくるっと……はいっ、出来上がり」
 クラスに背を向けて、浩平がおずおずと教卓の上に腰かけ た。
 「ね? これなら直接見られないから恥ずかしくないでし ょ」
 浩平の返事も聞かず、亜由子が浩平の両脚を持って生徒た ちのほうへ方向を変えさせる。両手で股間を隠していた浩平 がバランスを崩しそうになって手を教卓についた。
 「わぁっ」
 教室全体から声があがった。浩平のブリーフから、真っ黒 なコンドームに根元まで覆われたペニスが突き出している。
 「反ってる」
 「すごい」
 「痛くないんですか?」
 浩平の生々しい興奮ぶりに、数人の女子が思わず顔を覆っ た。

 「浩平くん、勇気を出して」
 亜由子は、何度か促されても行為を始められずにいる浩平 の手を取ってペニスに添えさせた。浩平の手を両手で包み込 むように押さえ、ペニスを握る形を取らせる。
 「触っただけで、じーんとするでしょう。気持ちいいよ ね」
 亜由子が、両手で包み込んだ浩平の手をゆっくりと上下動 させる。
 「こうすると、もっと気持ちいいよね。さ、続けて、浩平 くん」
 だが、亜由子が手を離すと浩平の手も止ってしまう。
 「大丈夫。最初はみんな緊張するの」
 優しい声で浩平をなだめると、もう一度浩平の手を包み込 んで上下に動かす。
 「ほら、浩平くん、手を動かすとジンジンするでしょう。 どんどんこすっちゃうよ。手が止まらなくなるよ」
 浩平に言葉をかけながら、やや速い動きでしばらく動かし 続けていた亜由子が、そっと手を離した。
 もう、浩平は止まらなかった。

 「こすってる」
 「すごいチカラはいってる」
 浩平の動きを見つめる女子の声に応えるように、亜由子が 授業を進めはじめた。
 「これが男子の性的興奮の様子です。もちろん女子にも性 的興奮はあるよね。たぶん今、浩平くんの様子を見て性的に 興奮してきた女子もいると思う」
 亜由子が教室を見まわす。
 「女子がどんな状態になるかは先週学習したよね。性的に 興奮してきたと思う女子は、正直に手を挙げてみて」
 まず2、3人の女子が胸のあたりで控えめに手を挙げた。
 「浩平くんも頑張ってるんだから、恥ずかしがらないで、 正直に」
 亜由子に促されて徐々に人数は増えていき、最後には女子 の過半数の手が挙がった。
 隣の席の子、昔からの同級生、クラス書記……手を挙げる 女子に行為を凝視され、目があうたび、浩平の上下動に熱が こもっていく。
 「ありがとう。いま手を挙げた人は、先週学習したとおり、 膣から分泌液が分泌されたり、クリトリスが堅くなったりし てるね」
 何人かの女子が無言でうなずいた。その一人が聡美である ことを発見して、浩平の激しい自慰は全速力の領域に突入し た。

 「う」
 夢中で動かしていた手を突然亜由子に制止され、浩平が苦 悶の声を漏らした。
 「浩平くん、もう恥ずかしくないよね。付けたままじゃ射 精の瞬間が観察できないの。だから外すね」
 もう羞恥心などどうでもいい、ただ昇りつめて射精したい、 それしか考えられないのだろう。浩平はただうなずいた。
 亜由子がコンドーム先端の精液溜めをつまみ、引き抜いて いく。ズルズルと引き抜かれていく歯がゆい刺激に、ゴムの 拘束衣を振りほどこうとするように、浩平が先端を暴れさせ る。
 ちゅぴっと音を立てて伸び切った黒いコンドームが一気に 抜けると、屹立を極めた浩平のペニスが姿を表した。コンド ーム内部で、おびただしい量の先汁を激しく上下に塗り込め られたそれは、ぬらぬらと濡れた光を帯びて、脈動と不規則 な跳躍で浩平の生命力を誇示していた。

 「濡れてる」
 「男子も濡れるんだ」
 「そうね。この液体を何というか覚えてる?」
 何人かの女子が答えた。
 「かうぱー」
 「カウパー腺液」
 もう待ち切れないという様子で行為を再開しようとする浩 平を制して、亜由子がクラスに質問を続ける。
 「こういうペニスを何て言うんだっけ?」
 クラス書記の美香が几帳面な声で答える。
 「仮性包茎です」
 「そうね。男子の過半数は仮性包茎なの。これも浩平くん を選んだ理由のひとつ」
 「くっ」
 浩平の包皮に亜由子の指先が触れた。
 「こうすると、包皮から亀頭が露出するわね」
 軽く添えた指先で包皮をにゅるん、にゅるんと動かしてみ せる。
 「くあ。くあぁ。」
 動かすたびに、亜由子の指先に操られるように、浩平が全 身をつっぱらせ声をあげる。
 「よく観察してみましょう。これが亀頭」
 完全に露出した位置で、亜由子が包皮を押さえた。
 「ほら、ここがくびれてるわね」
 露出したみずみずしい亀頭にクラス全員の視線が集まると、 浩平の身体は透明な水滴を次々と溢れさせて反応した。

 「浩平くん、下着も取っていいよね?」
 一刻も早く行為を再開したい浩平が返事の代わりに腰を浮 かせ、亜由子は浩平のブリーフを引き抜いた。

 8-3

 手のひらを開いて、教卓の上で行為の再開を待ち構える浩 平を見ながら、亜由子がクラスに質問した。
 「手で直接だと、カウパー腺液だけじゃ足りないわね。な ぜだか判る人」
 美香が手を挙げた。ノートに引かれた蛍光のアンダーライ ンをたどりながら答える。
 「潤滑が足りないと性器を傷めてしまうことがあるからで す」
 「そうね。前列の女子、手伝ってくれるかな?」
 亜由子がキャンディーのようなものを前列の女子に配って いく。一袋に一錠ずつ、ラムネ菓子を大きくしたようなタブ レットが入っていて、パッケージに「保健実習用 タブレッ ト・ローション」と書かれている。

 「これを、口の中で完全に溶かしてください」
 「あ、おいしい」
 「レモン味」
 「えー、先生ー、女子だけすか」
 タブレットを貰えない男子が不平の声を出す。
 「お菓子じゃないからね」
 「先生、つばが出てきます」
 「口の中がぬるぬるしてきた」
 溶けるのを待ちながら、亜由子が効能を説明する。
 タブレット・ローションは何種類か市販されているが、亜 由子が配ったものはシトラスミント味の口腔内崩壊錠で、口 に含むと唾液の分泌を促進しながら素直に溶けてローション 状になる。唾液中の雑菌を殺菌する作用もあり、もちろん飲 み込んでも無害な成分だ。

 「タブレットが溶けたら前に出て」
 やはり恥ずかしいのだろう。ためらう女子を亜由子がなだ めた。
 「浩平くんも、こんなに頑張ってるんだから、協力してあ げなきゃ」
 ローションを含んだ口をもごもごさせながら、前列の女子 3人が教卓のわきに前に並んだ。

 まず美香が、大きく開いた浩平の両脚の間に立った。前か がみになって、浩平の鼻先でシャンプーの香りを揺らしなが ら顔の位置を調整する。真剣な顔を上気させて、ペニスの真 上に狙いをつけようとするが、ひどく難しそうだ。無理もな い。美香のすぐ目の前で、浩平の手が我慢しきれずペニスを しごき始めている。
 「んっ」
 小さな声と共に、美香の口から軽く泡立ったローションが ゆっくりと流れ落ちる。驚くほど長い糸が、美香の唇と浩平 の先端を繋いで光った。美香のローションを擦り込もうとす るように、浩平の手がペニス全体を滑っていく。くちゅくち ゅと音を立てて浩平が上下動させると、美香がますます赤面 した。

 「ごめんなさい……」
 間近から浩平の身体を直視するのが恥ずかしかったのだろ う。3人めの女子が浩平の陰嚢にローションをこぼしてしま った。浩平は、そのまま陰嚢から内股まで、まぶすように塗 り広げる。

 なぜか3人とも、垂らした後、浩平にちょこんとおじぎを していく。ローションといっても、直接口から垂らす行為に、 浩平につばをかけているような引け目を感じるのだろうか。

 女子3人のローションを下半身にまぶされて、タブレット のミントと女子の唾液の微香が混ざり合った、タブレット・ ローション独特の香りに浩平の身体は包まれている。

 「足りなくなったら、また追加するからね」
 教卓の上で両脚を大きく広げ、アヌスから会陰、陰嚢、ペ ニスまで、プライバシーのすべてをクラス全員に凝視されな がら、飛沫が飛びそうな勢いで音を立てて熱中する浩平に、 亜由子が言った。

 8-4

 「みんなよく見て。陰嚢が上がってきたわね」
 クラスの視線が浩平の茎の根元に集中する。
 「あれはオルガスムスと射精が近いしるしなの。射精の準 備が始まってるのね」
 亜由子が机を左右に寄せるように指示した。浩平を載せた 教卓の正面に、後ろの黒板まで一直線に通路ができた。
 「さあ、浩平くん。射精しても大丈夫よ」

 「精液って、そんなに飛ぶんですか?」
 「個人差はあるけど、浩平くんの年頃の子はすごく元気が いいの。三日も溜めてたら、何メートル飛ぶかわからない わ」
 歯を食い縛る浩平をクラス全員が凝視する。
 「苦しいんですか」
 ひとりの女子がたずねる。
 「逆よ。気持ちいいの。叫びたくなるくらい気持ちいい の」
 亜由子が浩平に声をかけた。
 「浩平くん。我慢しなくていいわ。声を出していいのよ」
 浩平が声を漏らしはじめた。
 「うっ。うっ……」
 教卓から浩平が転落しないよう背後に立った亜由子が、浩 平の耳元で囁いた。
 「まだ我慢してるね。この教室に、浩平くんのオナペット がいるんでしょう? 目をそらさなくていいの。その子を見 つめながら、していいのよ」
 亜由子の言葉に反応するように浩平が声をあげた。
 「ううっ……さ…」
 流すような視線でしか見ることができずにいた聡美を、浩 平は初めてまっすぐに見た。聡美の制服、聡美の手、聡美の 髪、聡美の唇、聡美の瞳。
 聡美も浩平と浩平の下半身を見つめている。
 「聡美!」
 聡美の視線をすべて受け止めようとするように、浩平が腰 を浮かせペニスを突き出して叫び声をあげた。
 「聡美っ! 聡美っ! はあああっ、聡美っ!」
 聡美の名を呼ぶたびに、浩平の内部で圧力が高まっていく のが見て取れる。
 「あああっ、聡美っ! いく、いくっ」
 男子も女子も息をのんで浩平を見つめる。
 「ああああ、出る、でるっ。聡美っ!」
 見開かれた聡美の瞳が静止した。
 「聡美ーっ!」
 名前を叫んだ瞬間、大きな力が浩平の身体を突き上げた。 裏筋が脈動し、ペニスを一気に突き抜けて精液が射出される。
 「ああっ……くあっ……くうっ…聡美っ…」
 繰り返す脈動のたびに、浩平の三日分の精液と快感が何度 もしぶとく噴出し、苦悶の声をあげさせる。が、浩平の視線 は聡美を捉えたままだ。
 クラス全員、無言で浩平の絶頂を見守る。
 「さとみ…さとみ…さ…とみ……」
 噴出を終えても、聡美の名が漏れるたびに残液を滲ませて 先端が跳ね上がり、浩平の下半身を痺れさせる余韻の深さを クラスに教えた。

 教室の中程まで飛んだ白濁液が、ある生徒には未知の、あ る生徒には身に覚えのある青臭い匂いを放っている。浩平は 放心状態のまま、かなりの角度を保ったペニスをひくんひく んと震わせている。
 鼻をすんすんさせながら、女子生徒たちが亜由子に質問し た。
 「まだ続いてるんですか? ……快感が……」
 「…えと…女子の自慰より……感じてるみたいです」
 「きっと普段以上に快感が大きかったのね。浩平くんが名 前を呼んでたから判ると思うけど、オナペットの存在が励み になったんだと思うの」
 ちょっと照れた表情を隠すように、聡美がノートを取りは じめる。
 「オナペットの働きって大きいわね」
 亜由子の言葉に男子も女子もうなずいた。
 「だから、誰かのオナペットになることは、ちょっと恥ず かしいかもしれないけど、決して悪いことではないの」
 浩平の様子を気づかいながら亜由子が続ける。
 「それに、女子の中には、今日浩平くんをオナペットにし ようと思ってる子がきっといると思う」
 数人の女子がそっとうなずいた。

 励ますように浩平の肩に手を触れて、亜由子が微笑んだ。 いつの間にか、浩平がペニスを握り2回目を始めている。授 業の終りまでに、浩平のエネルギーは何回はじけることにな るのだろう。
 「あなたも手伝って」
 亜由子がタブレットを手渡すと、聡美は静かにうなずいて 口に含んだ。

 

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